待望の新曲「光の中へ/結束バンド」
2023年5月21日に結束バンドがアニメの世界から飛び出し、まさかのワンマンライブを行った。その際に初披露されたのが「光の中へ」という新曲だった。今までの技術が全て詰め込まれた集大成的な楽曲ともいえる本作について、ワンマンライブの舞台となったZepp Hanedaをモデルとしたリリックビデオが公開され、公開2日で150万回近く再生されている。
楽曲、歌詞、CDジャケットまで、様々なところにオマージュや作品への愛が盛り込まれた「光の中へ」を考察していく。
イントロ(0:00~0:23) 集大成的な3つの曲展開
歌が始まるまでのイントロから印象的で、3つの曲展開が繋げられている。
- (0:00~0:10)『ぼざろ!』に多大な影響を与えたASIAN KUNG-FU GENERATIONやNUMBER GIRLを彷彿とさせるギターのアルペジオ主体の展開。
- (0:10~0:12)クリーントーンのギターフレーズが挿入される。「ぼざろ!」のエンディングテーマの一つだった「カラカラ」やその作曲者であるtricotのようなマスロック系バンドを彷彿とさせるフレーズ。
- (0:12~0:23)前作のOP曲「青春コンプレックス」等色々な場面で披露されてきたペンタトニックスケール主体でレガート(左手でメロディを高速で繋げる奏法)を多用する、これぞ「ぼっち」な音。
このような形で、これまで結束バンドが見せてきた様々な側面が、ぎゅっと濃縮されたようなイントロになっている。ここから「光の中へ」の編曲はさらに作品への愛を深める。
また作品内の世界で考えると、実はアニメ最終話の直後に、ぼっちがギターを買って残った資金でエフェクター(ギターの音色を変える機械)を大人買いするシーンがある。本曲のイントロでは、ピッチシフターを初めとして普通のギタリストなら持っていないような珍しいエフェクターの音が聞こえてくるのだが、大人買いしたエフェクターが有効活用されているのかもしれない(なんて)。
A’メロ(0:32~43) 「あのバンド」のセルフオマージュ
Aメロの二回し目、右側から聴こえるリードギターに耳をすますと、「ぼざろ!」が好きな人なら何度も聴いたであろうあのフレーズを弾いていることが分かる。
アニメの初ライブのシーンで、ぼっちがアドリブで弾き始めた「あのバンド」の演奏前のフレーズである。アドリブという設定上、これまでこの場面はCD化されていなかったが、なんとセルフオマージュという形で「光の中へ」に登場した。実際にバンド活動をやっていると、メンバーがアドリブで弾いたフレーズが良かったので、楽曲に採用されるということがある。今回のオマージュも、作中世界ではまさに「好評だったアドリブのフレーズ」が曲に採用されたイメージではないだろうか。
ちなみにサビの折り返しのフレーズでも、四分音符でチョーキング(ギターの音程をあげる奏法)が繰り返される箇所があるが、これも「あのバンド」のサビで使われていた。
Aメロ(1:58~2:07) 急にレゲエ・ダブになる
2回し目のAメロで急にリズムがゆるくなり、レゲエやダブと呼ばれる中南米がルーツの音楽のが現れる。ギターロックなのになぜレゲエ?と、不思議に思われた方も多いんじゃないだろうか。実はこのギターロックにレゲエやダブを取り上げた先駆者がNUMBER GIRLと呼ばれるバンドで、そして彼らに多大な影響を受けたのがASIAN KUNG-FU GENERATIONなのである。
彼らの代表曲ともいえる「リライト」では、ギターロック全開な1回し目が終わる(2:18~)あたりから、浮遊感の強いダブパートが始まる。ギターロックの途中にダブやレゲエが挟まれる展開が、「リライト」のような邦ロックの名曲に対するオマージュだとすれば、「光の中へ」にどれだけ強い邦ロックへの愛が込められたのか伝わってくる。そこから連続して「あのバンド」のフレーズに接続するのが最高。集大成です。パズルのように複雑なアレンジを手掛けた三井律郎氏に賛辞しかない。
藤森元生(SAKANAMON)により練られた詞
作詞作曲はバンド・SAKANAMONで活躍する藤森元生。下北沢でもかなりライブをやっている2007年結成の有名バンドだが、これまでも言葉遊びの盛り込まれた歌詞を書いてきた。今回の「光の中へ」でも、Aメロで+や-のような四則演算を使っていたり、「本番8小節前」という歌詞の8小節後にサビが始まったり、サビで「爪弾き(つまはじき、つまびき)」と同じ漢字に二つの意味を持たせていたり、印象的な詞を書いている。
注目したいのは「この時間 この場所 まるで絵空事」というフレーズ。実はアニメの文化祭のシーンで演奏された「星座になれたら」のラストサビで、「夜広げて 描こう 絵空事」と歌われており、同曲へのアンサーソングと言える。
しかも「光の中へ」には、「光の先へダイブする歌」という歌詞があるのだが、まさに文化祭のシーンのラストにあったあれだよね…と思わせる仕掛けになっていて、何重にも面白い。あの文化祭の先にこの曲があるんだと思わせる、『ぼざろ!』の世界を拡大するような詞になっているのだ。
シングルジャケットはYMO+サンボマスター?
シングルCDのジャケットもこれまたクールだ。シンプルな構図のなのにカッコいいイラストは、実は二つのバンドがオマージュされているのではないかと考えている。
一つはYMOだ。2023年に入ってから高橋幸宏、坂本龍一と二人も訃報が続いてしまった日本の伝説的なバンドである。日本発で「本当に」世界中で聴かれた。「光の中へ」のジャケットを見ていただくと、椅子に座っている構図に加えて、なぜかぼっちが中華服を着ていることがわかる。YMOのオマージュらしい服装だ。このタイミングであえてYMOをオマージュするということに、邦楽の歴史に対するリスペクトを感じる。
もう一つはサンボマスターの名曲・光のロックだ。劇場版『BLEACH』の主題歌だった(氷輪丸のやつ)。これはフォントの感じだったり、黄色の色味だったりが非常に似ているような印象を受けた(違ったらすいません…)。サンボマスターもギブソンのギターを弾きまくるタイプのバンドで、熱量がとてつもなく、『ぼっち・ざ・ろっく!』とは近い時空にいるバンドだと勝手ながら感じている。
おわりに
早速沢山再生される!
バンドってシンガロングパートレコーディングする時、普段唄わないメンバーまで人数欲しいから駆り出されがち。
という事で、いいね!とノリノリの虹夏、渋々参加してるぼっち含めの4人が唄ってます
もしいつかライブでやる日が来たら大合唱して欲しい https://t.co/89PLcsoUt3— GEN OKAMURA / 岡村 弦 (@GENDAM) May 23, 2023
ここまで邦楽と『ぼざろ!』への愛が詰め込まれた「光の中へ」が最後にたどり着いたのは、メンバー全員によるコーラスだった。驚かれた方も多いのではないだろうか。ラストのみんなで歌うパートも、実は邦ロックで見かける展開だったりする(もっと合唱っぽいことが多いけど)。
『ぼっち・ざ・ろっく!』がヒットした理由の一つに、本当に作中のキャラクターたちがいて、バンド活動をしているような、そんな風に思わせる音楽や作画で強固に作り上げられた作品世界があったのではないかと思うが、まさか新曲が出るとは…。現実とバーチャルリアリティーの境界がますます曖昧になり、VTuberの楽曲がヒットする現代においては、アニメ初のバンドが活動し続けることも可能なのか。
先日、アニメ版を総集編にした劇場版の製作が発表された。映画館という音楽を聴くのに最高の環境で、もう一度『ぼっち・ざ・ろっく!』がみれる。非常に楽しみだ。これだけ人気を博したのに、続編が発表されないのは気にかかる部分もあるが、そこはCDやDVDなどを買って応援していくしかないのだろう。続報に期待したい。
『ぼっち・ざ・ろっく!』の完全生産限定DVD/Blu-rayの最終6巻も、「光の中へ」と同日の5/24日に発売開始した。要チェック。
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