ドラムヴォーカルはなぜ少ない?
ドラムヴォーカルは珍しい。ヴォーカルが演奏する楽器として、ギターなら伴奏なので単調になっても問題ないが、ドラムが単調だとつまらない楽曲になりがちだからである。必然、ドラムヴォーカルを実現するためにはある程度の技巧が必要となる。しかしそのスタイルが珍しいからこそ、シシドカフカはCMに出ることが出来たのである。
また昨年大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』に示されていたように、英バンド・QUEENのコーラスの要は、ドラム担当ロジャー・テイラーである。元聖歌隊の美声は、メイン・ヴォーカルであるフレディ・マーキュリー以上の高音が出せたという。
ドラム・ヴォーカルは少ないながらも、これまでの音楽の歴史において、一定の地位を占めてきた。今回は日本のバンドにおいて、ドラムヴォーカルを採用している方々をいくつか紹介する。
モーモールルギャバン
京都が生んだ3ピースサイケポップバンド、モーモールルギャバン。音源を生演奏するだけで十数人必要であろうポップスを3人でやりつつ、最後はサイケデリックの渦の中に飲み込まれていく新奇性で、一定の地位を占めてきた2005年結成のベテランバンドだ。
コミカルなライブ・パフォーマンスで知られており、コミック・バンドと思われている方も多いかもしれないが、思うに最大の魅力はツインヴォーカル故のエモーショナルな歌メロだ。そしてクソったれな日常を美化せず歌い上げる詞は、キラキラしたJ-POPよりも元気を与えるのだ。
2009年にリリースされたデビューアルバムのジャケットは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全ジャケットや小説『夜は短し歩けよ乙女』でイラストを担当している中村佑介によるもの。今とは違う画風が面白い。
シナリオアート
内気なギターヴォーカルと快活なドラムヴォーカルを、保護者的立ち位置のベーシストが見守る平和なバンド、それがシナリオアートだ。独自の世界観を構築していくような、ストーリー性に満ちた歌詞やバンドの雰囲気とは対照的に、ソリッドな演奏には積み重ねられた修練が透ける。
2019年、結成10周年を迎えたシナリオアート。夢見心地なだけじゃない彼らのファンタジーは、どこへ向かい何を鳴らすのか。バランスの取れた3人組が生み出す音に乗っていこう。
rumania montevideo
rumania montevideo(ルーマニア・モンテビデオ)はメジャーデビュー曲「Still For Your Love」を「名探偵コナン」のEDテーマとして提供し、結成2年でオリコン9位をたたき出したバンドだ。しかしその2年後には、メンバーの内3人が別のバンドを結成し、事実上の解散状態に陥った。まさに音楽業界を駆け抜けたバンドである。
お待たせしました‼️
ライブの日程が決まりました。
『rumania montevideo LIVE 2019〜僕を待つ君へ〜』
2019.12.01(日) @hillsパン工場
開場16:30 開演17:00
前売¥4000(+drink別)※チケットは8/1正午〜チケットぴあにて発売
Pコード:159-061 pic.twitter.com/WAz9nmGWHa— 三好誠(rumania montevideo) (@rumaniamontevi2) July 8, 2019
2019年12月1日に『Rumania Montevideo Live 2019〜僕を待つ君へ〜』と題して、大阪・ヒルズパン工場にて復活ライブが行われる予定。
※チケットの販売は終了しております。
勝手にしやがれ
音楽は楽しい。そう思わせてくれるのが、20年以上に渡ってジャズとパンクを鳴らしてきた勝手にしやがれだ。昭和の一番いい時期からタイムスリップしてきたような楽曲の数々は、きっと時代にマッチしてこなかっただろう。彼らの歩いてきた道のりの険しさを示すようで、だからこそ染みる。
お洒落でノレて、どこか哀愁も漂う。そんなバンドが今も日本中で、自分たちの音楽を鳴らしているのだ。
8otto
UKロックの影響が感じられるサウンドながら、ドラムヴォーカルを擁する編成が特徴的な8otto(オットー)は、2004年結成のベテランバンドだ。ほとんどの楽曲を一発録りで収録してしまう硬派なスタンスで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチや元BLANKEY JET CITYの浅井健一に評価されている。
『ニンジャスレイヤー』というアニメのEDテーマに提供した楽曲「SRKEEN」では、「Ozero」を発展させた、ほぼ英語に聴こえる日本語詞を披露。発音の崩し方が上手い。
C-C-B
知名度は本日紹介するバンドでもNo.1ながら、ドラムヴォーカルであることを知っていた人は少ないのでは。C-C-Bはメンバー全員がヴォーカルを取るバンドで、代表曲「Romanticが止まらない」はなんとドラムヴォーカルの楽曲なのである。一見単なるパーティーソングのようだが、厚めに作られたコーラスワークが個性的だ。
奮酉
チャットモンチー以降のガールズバンドであることを感じさせながら、特徴的な編成とジャンルレスな音楽を鳴らす奮酉(ふるとり)。良い音楽を作るということ以外は、何にも囚われていない高校の同級生二人組。その真っ新なページの上には、ジャズのコード感、ふにゃふにゃのオルタナ、正統派ロックからオーガニックなループのヒップホップまで、何もかもが詰め込まれる。
楽しんで吹き込まれたことが伝わってくるような冒頭のラップと、緩さが魅力的な「ccc」には、彼女たちの魅力が詰まっている。オルタナからヒップホップまで、ジャンルレスな奮酉の楽曲は、ぜひともアルバム単位で聴いてほしい。
メシアと人人
京都が生んだ愛され2ピース・ドリームノイズポップ・バンド。メシアと人人(めしあとにんじん)は、ギターヴォーカル・北山敬将とドラムヴォーカル・ナツコの掛け合いが熱い。そのやるせなさと激情と感傷は、ライブでこそ真価を発揮する。
このジャンルは決してまともなライブ音源をリリースすることが出来ない。空間にギターの音を反響させて完成する音楽だからだ。だからライブ映像には、その熱さしか閉じ込めることが出来ない。絶対に生で見てほしい。
ライブ情報はこちらの公式サイトから。
おわりに
ドラム・ヴォーカルの楽曲群、意外とリズムが単調ではなくて驚いた方も多いのではないだろうか。簡単に出来ることではないが、実現すればそれだけで個性的なバンドとして世に出せるのだ。そしてドラム・ヴォーカルを採用しているバンドは、それ以外の部分にも、何かしらの個性…あるいはこだわりと言っても良いかもしれない…を持っているのである。
今度皆さんが新しいバンドに出会われた際には、いったい誰がヴォーカルを取っているのか、注目してみてくださいね。それでは。
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