ずとまよ「嘘じゃない」MV考察と愛のあるSFオマージュ一覧

  • ずっと真夜中でいいのに。の「嘘じゃない」のMVはSF映画やアニメのオマージュ満載。それぞれ解説していく。また宇宙生物とニラちゃんについて、MVの内容を考察。
※アマゾンプライムビデオで見られる映画の案内も含まれます。
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ずっと真夜中でいいのに。「嘘じゃない」について

「嘘じゃない」はずっと真夜中でいいのに。の20thシングルで、ミニアルバム『虚仮の一念海馬に託す』に収録されている楽曲。スタジオコロリド制作のアニメーション映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』主題歌として楽曲提供された。

MVの監督・脚本ははなぶし氏。「お勉強しといてよ」「暗く黒く」のMVを手掛けた方で、3回目の担当となる。MVというわずかな時間の中で、奥行きあるストーリーを描き、これまでも評価されてきた。

「嘘じゃない」MVのSFオマージュ

SF映画好きの方は既に気が付いていると思うが、このMVにはたくさんのSFオマージュが盛り込まれている。一つ一つ確認していきたい。

実験の様子は『ライフ』

火星で発見された生命体を宇宙ステーションで培養したら、大きくなってメチャクチャ人間を攻撃してくるように。逃げ場のない宇宙空間の中でモンスターと戦う羽目になるというパニックSF映画『ライフ』。

実験器具がほぼそのまんまなのと、観察している宇宙生物の姿もそっくりだ。映画『ライフ』では実験生物が成長しすぎた結果、とてつもないパワーを獲得して器具から脱出してしまったのだが、「嘘じゃない」のMVでは実験生物が槍のような形状になってガラスを突き破ってしまう(MV 0:52~)。

またMVの3:35~でネコが粘菌のように脱出ポッド内に体を張り巡らせるシーンは、ほとんど同じ描写が『ライフ』の終盤に登場する。海に不時着するのも同じ。『ライフ』と「嘘じゃない」で目的が真逆なのが愛おしい。

ネコがいるのは『エイリアン』

ところで、『ライフ』のような密室空間でモンスターと戦う物語には元ネタがある。リドリースコット監督の『エイリアン』である。2024年に7作目の『エイリアン:ロムルス』が公開されたSFホラーの傑作で、宇宙ステーションに侵入したモンスターと戦う人々が描かれているのだが、実は主人公が連れてきた猫が登場する。

この猫が事件を引き起こしてしまったり、女性主人公のリプリーが一刻を争う状況なのに猫を助けに行ってしまったりするなど、気まぐれな猫とそれに振り回される人間というのがこの映画の見どころだ。「嘘じゃない」で猫が登場するのは『エイリアン』のオマージュと思われる。また天井からモンスターが襲い掛かってくるのもかなり『エイリアン』っぽい(この上から襲い掛かってくる様子は『ライフ』でも繰り返されている)。

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モンスター化したネコの食事風景は『ストレンジャーシングス』

ネットフリックスで配信されているSFホラードラマの傑作『ストレンジャー・シングス』には、異世界から来た生物・デモドッグが登場する。顔が花のように分かれている犬みたいなモンスターだ。「嘘じゃない」MVの2:09~あたりに登場するモンスター化したネコの食事風景がそっくりである。

宇宙で作業するシーンは『ゼロ・グラビティ』

近くで破壊された人工衛星の破片がスペースシャトルに衝突し、シャトルからの決死の脱出劇を描いたSF映画『ゼロ・グラビティ』。筆者はこの映画が一番好きで、モンスターが出てこなくても、一番怖い宇宙映画。リアルな描写で冷や汗が出る作品だ。宇宙の怖さを思い知らされるアカデミー賞を7部門受賞した傑作。

『嘘じゃない』でオマージュしたと思われるのは、下記の3つの場面。

  • 2:16~)消火器で軌道を変えるモンスターネコ
  • 2:35~)宇宙空間で振り回されるニラちゃん
  • 4:13~)衛星の残骸が降り注ぐ

これらのシーンは、『ゼロ・グラビティ』でも見せ場になっているので、ぜひ確かめてほしい

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ラストの息継ぎシーンは「未来少年コナン」


宮崎駿のデビュー作「未来少年コナン」には、ヒロインのラナが水中に捕えられたコナンに口移しで酸素を送るという名シーンがある。ラナは何度も酸素を渡そうとするが、体力が尽きて水中で気絶してしまう。コナンはラナからもらった酸素で目を覚まし、拘束を解いて、とんでもないパワーでラナごと水中に浮上する。口移しで酸素を渡すシーンはもちろん、その後海面から飛び出す勢いが『嘘じゃない』のMVにおける最後の展開でオマージュされていると思われる。

『嘘じゃない』MVのSFからのオマージュ一覧

  • ライフ
  • エイリアン
  • ストレンジャー・シングス
  • ゼロ・グラビティ
  • 未来少年コナン

これらのSF作品を『嘘じゃない』のMVでオマージュしていると思われる。他にもそれらしき作品はあるのだが、確証がないので割愛させていただきたい。それにしてもこれだけの作品をつなぎ合わせてわずか4:33の物語にしてしまうとは、構成力とSFへの愛が素晴らしい。参照元も幅広い。

【考察】ネコはどうなったのか

ところでMVの冒頭で流血していたネコはどうなったのだろうか。MVの中ではネコそのものの姿はなく、着ていたダウンだけが残されていた。

宇宙生物とネコは融合したのだと思われる。

MVの0:33~で宇宙生物はニラちゃんに襲い掛かろうとしている。その後宇宙生物はアイデアを巡らせ、0:49~では体を槍のようにねじることで実験器具から脱出する。この器具の外の生物に対する攻撃性は、ネコっぽい姿になってからは失われている。というか1:38~で初対面とは思えない甘え方をしている。0:43~ではニラちゃんの寝床の様子が描かれているが、枕もとに大量のネコの写真を貼るほどのネコ好きで、かなり飼い猫を愛していたことが分かる(ずとまよのACAね氏が飼い猫・しょうがストリングスを愛しているように)。

そもそも『ライフ』においても『エイリアン』においても、宇宙生物が人間を襲うのは生存本能である。どちらも人間側からしかけたみたいなところもある。生存が脅かされない関係であれば、宇宙生物側も人間を襲う必要はないのだが、ネコと融合したことでそれが宇宙生物にも伝わったのだろうか。あるいは宇宙生物は合理的な判断で攻撃していただけで、そこに非合理な行動の塊であるネコが混じったことで、人と共生できる生き物に変わったのだろうか。

【考察】酸素を分け与えるということ

この宇宙ネコは、宇宙空間でマスクなしで行動できる生物である。当然、酸素はいらない。でも3:52~でニラちゃんは宇宙ネコに空気を分け与えて気絶する。酸素とは生命の源で、それを分け与えることには象徴的な意味が生まれる(酸素を渡した側は一歩死に近づいている)。

そしてその酸素を、自らの体を犠牲にして足がほとんどなくなってしまった宇宙ネコが受け取り、目を覚まし、それが二人そろっての生存に繋がるという「共生」を描いた結末。『ゼロ・グラビティ』のラストシーンや、「未来少年コナン」の該当シーンと重ねてみると、どうしたって感動してしまう。

おわりに

筆者がずっと真夜中でいいのに。の大好きなところは、それぞれの作品における世界観の作りこみだ。「嘘じゃない」も、アニメ映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』の主題歌だから、そちらに合わせた内容にすることが出来たはずだ。でも、あえて全くのオリジナルな表現をMVで発表するという形になった。この妥協しない感じというか、職人っぽさというか、最近のずとまよの言葉で言うと愚直に名巧であろうとするスタンスに、どうしても応援したくなってしまう。

今後も少しずつ、ずっと真夜中でいいのに。を応援する記事を出していきたいと思う。それでは。

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