日本のバンド名が歌詞に入るということ
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日本で活動しているバンドの名前が歌詞に入るって珍しいんじゃないだろうか。BUMP OF CHICKENとかRADWIMPSとか歌詞に入ってる曲聴いたことないでしょ。でも「ナンバーガール」と彼らにまつわるフレーズは、最近の人気邦ロックバンドの歌詞や曲名にも登場する。なぜだろうか。
それぞれの歌詞を通じて、ナンバーガールが何を意味して歌詞に加えられるのか解き明かしていきたい。
「ナンバーガール」が歌詞に入っている曲
まずは歌詞に入っている曲をご紹介。
ネクライトーキー「だけじゃないBABY」
コンテンポラリーな生活のギターヴォーカルとして、あるいはボカロP・石風呂として、マルチに活躍してきたGt.朝日廉が手掛けるネクライトーキー。カントリー調のさわやかな楽曲と行き詰った暗い歌詞の対比が特徴的な「だけじゃないBABY」には「ナンバーガール」の名前が登場する。
何かを待ち続けていながらも誰もやってこない詞の中で、一人称の自分は「NUMBER GIRL」を聴いている。OMOIDEを断ち切れず、MABOROSHIに苦しむナンバーガール向井秀徳の詞と被って見える。
過去を切り捨てる決意と、それでも切り離せない過去というテーマはナンバーガールの歌詞の特徴の一つだ。朝日廉はそれも全てわかったうえで引用している。
LUNKHEAD 「アウトマイヘッド」
昨年・結成20年を迎えたベテランバンド・LUNKHEADにも「ナンバーガール」が歌詞に登場する曲がある。結成20周年の年にリリースされた12thアルバム『plusequal』から、「アウトマイヘッド」だ。
ナンバーガールの名曲「OMOIDE IN MY HEAD」を彷彿とさせる曲名もさることながら、1999年に結成されたバンドが、1995年に結成された「ナンバーガール」を歌詞に入れるということに、不思議なつながりを感じる。
ライブの日の自分を歌ったという歌詞。LUNKHEADはナンバーガールをルーツとするバンドの一つであり、今もライブ前に聴いて気合を入れているのかもしれない。
歌詞に登場する「17歳の俺」というフレーズは、「OMOIDE IN MY HEAD」にも登場する。ナンバーガールが1st Album『SCHOOL GIRL BYE BYE』の1曲目として、1997年に世に放ったフレーズだ。
そして「アウトマイヘッド」を作詞作曲したLUNKHEADの小高芳太朗は1980年4月生まれであり、まさに「OMOIDE IN MY HEAD」の年に17歳だった。音楽は時に、こうした奇妙な繋がりを持つ。
突然少年「ロックンロールの神様は消えた」
粗削りなオルタナティブ・ロックを展開する突然少年の「ロックンロールの神様は消えた」には、「ナンバガみたいな音楽をやりてぇ」というフレーズがある。やはりナンバーガールが邦ロックに与えた影響は大きい。ギターのフレーズにもナンバーガールが表れている。
暮らし「ナンバーガールにはなれない」
「ナンバーガールにはなれない」と叫ぶ熱量に胸打たれるバンド・暮らしの一曲。ナンバーガールの「IGGY POP FAN CLUB」のオマージュと思われるイントロのフレーズにも愛を感じる。
スーパーノア「懐かしい気持ち」
京都の至宝と呼ばれるバンド・スーパーノアの「懐かしい気持ち」には、「スクールガールバイバイ」というフレーズが登場する。これはもちろんナンバーガールの1st Album『SCHOOL GIRL BYE BYE』を引用したフレーズだろう。
YouTubeに公開されているナンバーガールトリビュートアルバム『Good-Bye SCHOOL GIRL』では、スーパーノアのGt.Vo.イツキライカによる「OMOIDE IN MY HEAD」のカバーが公開されている。「IGGY POP FAN CLUB」や「NUM-AMI-DABUTZ」など複数の楽曲のフレーズを引用した愛が溢れるアレンジになっているため、ナンバーガールファンはぜひ聴いてほしい。
ハハノシキュウ「おはようクロニクル」
顔を髪で隠す謎多きラッパー・ハハノシキュウ。HIPHOP界隈の方々は私小説的なリリックを書く中で「ナンバーガール」というフレーズを使うことが多い。本当に学生時代に聴いていたのだろう。その中で面白い入れ方をしているのがハハノシキュウの「おはようクロニクル」。歌詞に登場するのは「ナンバーガール」ではなく「アヒトイナザワ(ナンバーガールのドラム)」である。
これはおやすみホログラムというアイドルグループのワンマンのために書き下ろされた楽曲で、彼女たちのこれまでを1曲に詰め込んだものだ。
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そしておやすみホログラムの楽曲にドラム担当として参加しているのが、ナンバーガールのアヒトイナザワである。ツアーも一緒に回った。
眠らずに朝が来てふらつきながら、帰る路すら躓きながら 「ドラムス、アヒトイナザワ」青春を取り戻しに来たから
引用:「おはようクロニクル」作詞/ハハノシキュウ・作曲オガワコウイチ
ナンバーガール「OMOIDE IN MY HEAD」の「眠らずに朝が来てふらつきながら」というフレーズと、向井秀徳がこの曲を演奏するときに必ず口にする「ドラムス、アヒトイナザワ」で韻が踏めるという発明。
「ナンバーガール」がタイトルに入っている曲
次はタイトルにナンバーガールが入っている曲を紹介
ASIAN KUNG-FU GENERATION「N.G.S」
「Number Girl Syndrome(=ナンバーガール症候群)」と読むこの楽曲は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの1stフルアルバム『君繋ファイブエム』に収録された。ナンバーガールを感じる和風なフレーズや、間奏前の掛け声。
俺は当時、誰よりもナンバーガールになりたかった。
後藤正文 (ASIAN KUNG-FU GENERATION)
ナンバーガールデビュー15周年企画でGt.Vo.後藤正文が出したコメントには、彼らのナンバーガールに対する姿勢がよくわかる。
きのこ帝国「Girl meets NUMBER GIRL」
ナンバーガールとゆらゆら帝国のフォロワーであるきのこ帝国。「脳に青が刺さる」と表現されたナンバーガールへの愛。「通学路」というフレーズが出てくるように、ナンバーガールは青春時代を歌った詞に登場することが多い。
おわりに
今回は紹介できなかったが下記の楽曲にも歌詞に「ナンバーガール」が登場する。
- 4×4=16「I’m still in Love」
- The Whoops「ドライヴ」
- 崎山蒼志※曲名不明、未リリース音源
- 水中、それは苦しい「保育園落ちた、吉田死ね」
「青春」の象徴として、ナンバーガールは引用されてきた。一人で音楽を聴いているような、その音を誰とも共有できないような、孤独な青春である。そして「憧れ」の存在としてもナンバーガールは歌われる。
邦楽にナンバーガールが与えたものの大きさ。これだけの力を持ったバンドが今、解散から長い時を経て再結成している。2020のナンバーガールが、日本の音楽シーンに更なる躍動を与えてくれるのではないか。そんな期待がやまない。
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