米津玄師「感電」
2020/7/10に米津玄師が新曲「感電」のMVを公開した。様々なジャンルを横断してきた彼が作り上げたのは、ギラギラしたファンク・ナンバー(※)。わずか1時間50分で100万回再生され、「Flamingo」の3時間17分で100万回再生という記録を塗り替えた。
きらびやかなトランペットやサックスの音に合わせて、様々な電子音やファンキーなギター・ベースの演奏が、小気味良いリズムを作り上げている。このハイレベルな演奏が、邦楽ブラックミュージック(黒人音楽)の有名ミュージシャンたちによって行なわれていることをぜひ知ってほしい。
Gt.関口シンゴ(Ovall)
ギターはプロデューサーとして、あるいは3ピースバンド・Ovallのギタリストとして活躍する関口シンゴが担当。あいみょんや藤原さくらのプロデュース、あるいはCMソング作成やテレビ朝日の番組「関ジャム」への出演で著名な音楽家となった。先日はBiSHのアイナ・ジ・エンドのソロ作「死にたい夜にかぎって」のプロデュースでも話題に。
ジャズや黒人音楽への深い知識を基に構成されるグルーヴ(※)感の強いフレーズと、優しい音色が特徴的なギタリストだ。
Ba. Shyoudog(韻シスト)
生のバンドでヒップホップを演奏する先駆者・韻シストでベーシストを務めるShyoudogが「感電」に参加している。今でこそヒップホップを演奏するバンドも多く現れたが、1998年に彼らが活動を開始した当時には、そういったバンドは少なかった。
いわば今の生バンドヒップホップというジャンルは韻シストの歩みとともに広がってきた。邦楽に一つのジャンルを作り上げた偉大なバンドのベーシストを、米津玄師は連れてきたのだ。邦楽の頂点にいながらも、ブラックミュージックを演奏するときにはその専門家をしっかり連れてくるという米津のこだわりが感じられる。
Dr. 石若駿(CRCK/LCKS)
27歳でありながら、世界レベルの技術を持つ若手のホープ・石若駿がドラムとして参加。彼の経歴を箇条書きにして、少しでも彼の凄さを伝えたい。
- 邦楽ジャズ界の頂点の一人であるジャズトランぺット奏者・日野皓正のライブに11歳でゲスト参加
- 日野照正ら日本を代表するジャズミュージシャンと共にシドニーのオペラハウスで演奏
- 世界最高峰の音楽を学ぶ場であるバークリー音楽院に奨学生として留学
- アニメ「坂道のアポロン(Prime Video)」にてモーションキャプチャーされアニメ出演
- King Gnuの前身バンドでドラムを叩いていた
- くるりのライブサポートに抜擢
ドラムの技術に関して、同世代で彼に勝てる人はなかなか思いつかない。またジャズやヒップホップなど、ブラックミュージックに精通しているのも今回抜擢された理由だろう。
特に「感電」~2:55でファンクからモダンジャズ風に変わるパート。石若の名刺代わりの歌うドラムフレーズに注目して聴いてみてほしい。
MELRAW HONES
MELRAW(安藤康平)らが結成したユニットMELRAW HORNSが「感電」の要であるホーンセクションを担当。King Gnuやシンリズム、WONKらの楽曲にも参加しており、邦楽ブラックミュージックを支える音として、多岐にわたり活躍している。
おわりに
「感電」で分かったのは米津玄師がブラックミュージックをする時に、その達人を集めるほどこだわりの強いミュージシャンだったということだ。
関口シンゴも、Shyoudogも、石若駿も、MELRAW HONESも、米津玄師のバックバンドに参加するのはこれが初めてである。通常バックの演奏は慣れ親しんだメンバーが録ることが多いため、かなり攻めた人選と言えるだろう。これだけのスター・プレイヤーを揃えるとは、今作の編曲を共作した坂東祐大(「海の幽霊」「馬と鹿」「パプリカ 米津玄師ver」も編曲)が描いた絵なのだろうか。それとも米津玄師本人が…?
これほどのこだわりをもって作られた「感電」も収録された、米津玄師の5th Album『STRAY SHEEP』が8/5にリリースされる。Blu-rayが付属する初回盤もあるとのことなので、要チェック。
彼らの新たな一面を見られた、良いサプライズとなった一曲だった。恐らくすぐにYouTube1億再生を突破するだろう。それでは。
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なんで感電がランキングから消えたの?