なぜレモンなのか、形から解き明かす米津玄師『Lemon』解釈

愛する人との死別を描いた名曲『Lemon』。そのタイトルを担うレモンが持つ重要な意味を考察していく。
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『Lemon』は死別の歌

『Lemon』は愛する人を失った「わたし」の歌である。ドラマ『アンナチュラル』は不審死した死体を解剖する研究所を舞台にしたドラマであり、それを受けて作られたのがこの曲だった。元々付けられていたタイトルは『Memento(=形見)』であることも、この解釈を支持する材料になるだろう。そして米津は楽曲制作中に祖父を亡くし、それが楽曲の出来栄えを大きく変えてしまったと語っている。

米津本人は出来上がった楽曲について「“あなたが死んで悲しいです”としか言ってない気がする」との感想を持っている。

引用:Wikipedia

というほどだからかなりのものだ。死者を思う場として教会がMVの舞台に設定されていることからも、この曲は愛する人との死別を歌っていることは間違いない。それでは細かく歌詞を解釈していこう。

ジレンマと皮肉

「Lemon/米津玄師」の歌詞 って「イイネ!」
「夢ならばどれほどよかったでしょう 未だに…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

Aメロはジレンマと皮肉が続く米津玄師らしい価値観で歌詞が書かれている。

夢であって欲しいことが現実で、現実であって欲しいことが夢。自分があなたに必死で隠していたことは、もう決して暴かれることはない。今やあなたに知ってほしいとさえ思っている。

このような永遠に解決できない地獄、これが米津玄師が愛しい人を失って感じたことなのか。

どこへ帰れないのか

サビの感覚はかなり共感できるところがある。会えない人との思い出は、なぜか楽しかったことよりも辛かったことばかり思い出してしまうものだ。

あなたへの愛はもう戻れない心の深くまで染み込んでしまったから、忘れることができない。愛はすでに別れの悲しみに変わったのに、元の自分には帰れない。だから心の中に雨が降っている。

雨が降り止むときは悲しみが終わり、あなたを忘れるとき。あなたが光でなくなるとき。

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肌で感じる喪失感

2番のAメロ、あなたを視覚ではなく触覚で感じる。その手触りこそあなただった。たしかにそこに居た。今はもう居なくなってしまった。そのことに対して自分が出来るのは、ただ泣くことだけ。やはりこの歌は、死別について歌っている。

Bメロで横顔と出てくるのは、あなたと自分がずっと側に寄り添っていたから。だから咄嗟に出てくる表情は正面ではなく、横顔なのだ。

魂の不滅

2番のサビではあなたの魂の不滅を願いながらも、自分と同じ苦しみを味わっていないことを祈っている。死によって消えてなくなったのではなく、どこかであなたが続いていてほしい。でもどうか苦しまないで。このジレンマも米津らしい。あなたが天国にいるイメージと、心象風景の光が重なってくる。

素直な言葉で

Cメロではこれまでの詩情や、死への思いは鳴りを潜め、ただあなたへの率直な思いが素直な言葉で溢れだす。ここまでリスナーを惹き付けてきたレモンの匂いや、雨、肌の触感。情景を充分に与えた上で、誰にでも共感出来る言葉が流れる。これが彼の詞のバランス感覚だ。

レモンはあなたとわたし

ラストサビで切り分けられてしまったレモンは、2度と元に戻ることはない。あなたとわたしの関係を例えている。

わたしにとってのあなたのように、あなたにとってもわたしが光でありますように。自分自身もレモンの片割れに例えたのは、そんな祈りがあったからだろう。この場面には彼のエゴも見えてくるのだ。

レモンの断面は神や仏の背中から指す光によく似ている。鮮やかな黄色と車輪状に入ったスジ。昔の人にとって神仏が目の前に現れなくとも、絶対的な希望であったように、わたしにとってあなたは光なのだ。決して見ることは無いとしても。

歪つな果実

米津玄師は無意識のうちにレモンを選んだと語っているが、CDのジャケットに自らレモンを描いたように、その形は強いイメージとしてあったはずだ

球になりきれない歪な(いびつ)形こそ、レモンの持つ特徴である。果物と言えば甘いものなのに、レモンは苦くて酸っぱい。それなのに花言葉は情熱だったりする。どこかズレている。アメリカ人がレモンというとき、それは「不完全」「できそこない」を意味するのである。そのズレた印象が『Lemon』全体と重なってくる。

最後に曲タイトルが出て、逆再生されているようなMVは一般的なものからズレている。恋人を想う歌なのに、悲しい思い出しか出てこない歌詞も。あるいは恋するあなたが登場人物なのに、そこに歌われているのが米津の祖父への想いであることも。MVでハイヒールを履いている米津玄師自身も。全てが歪み、ズレている。

そしてレモンは歪な形だからこそ、球体と違い、切り分けられた片方としかペアになれない。この歪みこそ、例え相手が亡くなってどうにもならないとしても、その人の姿を追い求めてしまう人の愛の歪さを示している。

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おわりに

歌詞に見えた多くの皮肉やジレンマや葛藤、何層にも歪んだラブソングにはズレて不完全な果物であるレモンが必要だったのだ。きっと今でも、彼は強く願っている。亡くした人の魂がいつまでも幸福であり続けることを、先立たれた者の悲しみの中から。

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