RADWIMPSのジャンル
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RADWIMPSのジャンルは何だろうか。公式サイトを調べてみたが書かれていなかった。Wikipediaには、10個以上のジャンルが並べられている。答えとはいえないだろう。
思えばRADWIMPSの楽曲にはラップが入っているものが多い。もしかして「ミクスチャー・ロック」なのでは?
ミクスチャー・ロックとは?
「ファンクやヒップホップ(当時流行りの黒人音楽)とロック(白人中心の音楽)を混ぜた音楽性を持ったバンド」
引用:Wikipedia
このようにWikipediaは紹介している。ロックに黒人音楽を混ぜたものと考えればよいわけだが、じゃあ日本のミクスチャーロックって他にどんな人たちがいるのだろう。代表的な方々をご紹介しよう。
あれ?なんか雰囲気がRADWIMPSと違くない?そう、実は日本でミクスチャーロックという言葉を使うときには、ラウドなロックにラップが入ったものを指すことが多いのだ。ラップが入っているロックだからと言って、RADWIMPSをミクスチャーと呼ぶ人は少ないだろう。
そもそもジャンルとは似た音楽の集まりである。RADWIMPSに似た音楽を見つけなければ彼らのジャンルはわからない。楽曲分析から彼らのジャンルを考えてみよう。
「いいんですか」から考えるRADWIMPS
「いいんですか」を始めとしてRADWIMPSにはラップが入っている楽曲が多い。ところでこのラップっていわゆるヒップホップなのだろうか。ちょっと聞いてみてほしい。
ヒップホップのラップ
ヒップホップにも色々なラップの方法があるが、例としてRHYMESTER(ライムスター)の「人間交差点」をご紹介。鋭く韻を踏んでいく(例えば「俺は東京生まれHIPHOP育ち、悪そうなやつは大体友達」ならマーカー部分が同じ音になっている、これが韻)のがヒップホップの特徴だ。聴いた印象をしっかり頭に残しながら次の曲に進んで頂きたい。
レゲエのラップ
レゲエ(ジャマイカ発の黒人音楽)にもラップがある。緩やかに体を横に揺らすようにメロディー重視でラップしていくレゲエと、鋭いヒップホップ。どちらがRADWIMPSのスタイルだろうか。
実際にはRADWIMPSはどちらのスタイルも使いこなしている。
そして「いいんですか」はレゲエのスタイルを参考に作られている。レゲエは①❷③❹という形でアクセントがつけられており、黒丸の箇所を強調するのが特徴だ。「いいんですか」でも❷と❹のタイミングに手拍子が入れられているため、レゲエらしいビートになっている。しかし同時にギターはロックのスタイルなのである。これがRADWIMPSの音楽ジャンルを複雑にしている。
「いいんですか」はレゲエでもあり、ロックでもあるのだ。
「おしゃかしゃま」から考えるRADWIMPS
イントロで緻密に絡み合う2本のギター。スラップ(※のちに紹介)主体のベース。早口でメロディというよりはリズム重視の歌(=ラップ)。このあたりが特徴と言えるだろうか。ではそれぞれを解き明かしていきたい。
ヒップホップの影響を受けたラップ
「おしゃかしゃま」のラップはヒップホップの影響を受けている。「いいんですか」とよく聞き比べてみてほしい。最近の楽曲だと「PAPARAZZI ~* この物語はフィクションです~」がヒップホップそのものと言ってもいいクオリティーだった。
ヒップホップには相手をディスる(=けなす)文化がある。敵意むき出しの「PAPARAZZI 」だけでなく、「おしゃかしゃま」も人類全体をディスった歌だという見方が出来るだろう。そういった文化的な側面も「おしゃかしゃま」には流用されている。
マスロック風のギター
2000年代中盤に「マスロック」というジャンルが日本で流行した。凛として時雨というバンドから始まったと流行の中で、androp、People In The Boxらが躍進した。この時代の最中で成長を遂げていったRADWIMPSが、彼らなりの解釈でマスロックを取り入れていたと考えても不思議ではない。2009年「おしゃかしゃま」、さかのぼれば2006年「ギミギミック」でこういった手法が登場するのも、時代にリンクしている(凛として時雨のメジャーデビューは2008年)。
フュージョン由来のスラップ
「おしゃかしゃま」でベースの武田祐介は、スラップ奏法という方法で演奏している。通常の奏法では人差し指と中指でベースを弾くのだが、スラップ奏法では親指を使って弦を打楽器のように叩く。武田が尊敬しているマーカス・ミラーというベーシストが得意とする奏法で、ファンキーなベースラインを弾くことが出来る。マーカス・ミラーは「フュージョン」というジャズの亜流のジャンルを代表するベーシストであり、「おしゃかしゃま」にその影響が見られる。
まとめると「おしゃかしゃま」はヒップホップ×マスロック×フュージョンという三つのジャンルから生まれた楽曲なのである。
おわりに
ムーディーなジャズをロックの文脈に取り込み、野田洋次郎がスキャットまでも披露した「揶揄」。パンクの意気込みが感じられる「ララバイ」。ポストロック風のサウンドで絶望を描き出した「狭心症」。彼らの音楽ひとつひとつをジャンル付けすることは可能だが、全ての作品に通ずるジャンルは存在しない。
様々な音楽のエッセンスを使いながら、RADWIMPSらしさでまとめる才能が、彼ら独自の音楽性を築き上げてきた。だからこそ現時点で彼らを括るジャンルは「RADWIMPS」という言葉以外にはないのだ。いつか彼らの影響を受けたバンドたちが集まり、また一つのジャンルとなっていくのだろう。
時代に合わせて進化してきたこのモンスターバンドは、今後も変わり続けるだろう。これからも注目していきたい。
このページにRADWIMPSと似た音楽を探してこられた方もいるかもしれません。少しでもお力になれればと思いますので、RADWIMPSの曲名を教えていただければその楽曲が影響を受けていると思われるジャンルをお伝えします。皆様が新しい音楽と出会う助けになれればと思っています。回答まで2~3日頂くかと思いますが、ぜひ下のコメント欄にお書きください。それでは。
コメント
RADのヒキコモリロリンに似た音楽は何ですか?
コメントありがとうございます。
「ヒキコモリロリン」は複数の楽曲がくっつけられたような印象があり、そっくりそのまま似た音楽を見つけることは難しいと思いますが、各パートに似た音楽を見つけることはできると思います。
特に「ヒキコモリロリン」で印象的なのが冒頭のラップパートや、そこからすこし落ち着いた曲展開に変わっていくところかと考えておりますが、そこにRADWIMPSメンバー全員が好きだと公言しているRed Hot Chili Peppersの影響をみることが出来そうです。
https://www.youtube.com/watch?v=JnfyjwChuNU
例えば代表曲「By The Way」では、早回しのラップ、縦ノリのリズム、16ビートでギターやベースが絡むダンサブルなリズムを聴くことができます。「ヒキコモリロリン」と構成は逆転していますが、静かなパートから激しいパートへの移行も織り込まれています。
https://www.youtube.com/watch?v=X5c7z-cBKDI
また「ヒキコモリロリン」におけるベースパートのスラップも、やはりRed Hot Chili Peppersの影響ではないかと思います。ラップとスラップが組み合わされた「Get Up And Jump」もご参考ください。