ソウル・R&Bのまなざし
ソウルやR&Bなど、ブラックミュージック(黒人音楽)からの影響が見られるシンガーソングライターたち。メジャーだとMISIA・JUJU・宇多田ヒカルがこの分野のSSW(シンガーソングライター)といえる。ルーツの異なる音楽をどのように取り入れるのか。それぞれの違いに注目していただきたい。
kiki vivi lily
大比良瑞希
ラブリーサマーちゃん
「可愛くてかっこいいピチピチロックギャル」をキャッチフレーズに、インターネットで公開した音源から火がついたシンガーソングライター。ラッパー・泉まくらとのコラボ楽曲「202 feat/泉まくら」も自身で編曲まで行っている。現代ではSSWの在り方もギターやピアノの弾き語り一本を超えて、自身のキャラクターを表現できるアレンジまで含んだものになっている。
おかもとえみ
バンド・フレンズのボーカルとしても活躍するおかもとえみ。THE・ラブ人間というバンドではベーシストとして4年間活動し、今も後述する関取花をはじめとした多くのミュージシャンをベースでサポートしている。また特撮リスペクトバンド・科楽特奏隊ではシンセサイザーを担当するなど、非常に多彩な音楽活動を行っている。彼女のソロの大名曲が「POOL」である。ライトブルーの空間を揺蕩う魅力をぜひ聴いてほしい。
NakamuraEmi
パワフルな言葉は誰かを責めるようでいて、常に自分自身に向けられているようで。そんな内省的な世界観がリズミカルな言葉選びとマッチしたのだろう、最近はNakamuraEmiを好きだという声を本当によく聞く。アコギを使ったフォーキーなブラックミュージックの作りこみもカッコいい。
Anly
ルーパーを駆使した音楽の難しいところは、一つでも失敗すればライブが崩壊するところ。沖縄・伊江島出身で英語堪能という様々なルーツを持つAnlyは、そんなルーパーを駆使した演奏の中で、英語と日本語を溶け合わせた独自の演奏を実現する。
Ruri Matsumura
プロデューサー集団が企画したイベント#origamiHomeSessions。プロデューサーが作ったトラックを使い、何らかの自分の曲を作るという企画で、数多くの投稿の中から見いだされたのが上記の楽曲「SWIPE」だった。同曲でTokyo Jazz Fes 2020 Tokyo Jazz plus+に出演。米国を中心に活動するRuri Matsumuraが日本で配信イベントに出演するというインターネットの奇跡。どうしてこんな人が埋もれていたのか、と思えるアレンジと表現の妙。
優河
しとしとと降る雨のように柔らかな質感のトラックと、その穏やかな空気にマッチする優しくもグルーヴ感の強い声。この曲がまだ3,000回しか再生されていないなんて!時代性ともマッチした彼女の音楽は、きっと今後注目を集める存在になる。
AAAMYYY
Naz
13歳の少女から出てきたとは思えない驚きの表現力。現在はWONKやSeihoなど、それぞれの分野で第一線を貼っているミュージシャンと制作した楽曲を発表している。
milet
作詞・milet、作曲・Toru/milet、編曲Toru(ONE OK ROCK)の一作「inside you」がドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』のオープニング・テーマに抜擢され、音楽配信サイト11サイトにて初登場1位を果たした。この方も声が大変すばらしい。
馬渡松子
ピアノによる表現
ピアノは感情を表現するのに最適な楽器であると言われている。松任谷由実や広瀬香美、アンジェラ・アキがその代表格だろう。その表現の多様性を活かしたシンガーソングライターたちをまずはご紹介したい。
中村佳穂
無名の状況からくるり・スチャダラパーBOSE・高野寛・tofubeatsらとの共演を実現させた天才。唯一無二の声とピアノの技巧を持って行われるアドリブ主体のライブは、その空間に居合わせたあらゆる人に衝撃を与える。「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督最新作「竜とそばかすの姫」にて、ヒロイン・ベルの歌を担当していることが判明。2021年中に更なる躍進を遂げるであろう、最重要の存在。
日食なつこ
ドラムとピアノというミニマルな組み合わせの中で、無限の音楽の可能性を示したシンガーソングライター・日食なつこ。単なる伴奏楽器に留まらない自由なピアノは、性格ゆえにバンドが組めないという彼女の研鑽の証しだろう。Spotifyによるライブ配信サービス・Spotify Sessionに日本人として初めて選出され、世界に向けて演奏した。
コトリンゴ
バークリー音楽院に留学し、その後ニューヨークで音楽活動を開始した早熟の才能。はじめに坂本龍一に見いだされ、日本デビューを飾った。アニメーション映画「この世界の片隅に」において、主題歌・劇中歌・BGMのすべてを担当し、その年の日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した。浮遊感とポップを両立させた世界観が特徴。
葉山久瑠実
葉山久瑠実のすごさは、その飾らなさかもしれない。ライブでは観客1人1人に負の感情をぶちまけるような、観る者に衝動を与える演奏を見せる。そして自分を売り込まず、YouTubeにあげている曲数も極端に少ない。5th miniアルバムまで出しているのだが、その中で公開されているのはほんの数曲だ。その独特な音楽活動のスタイルに、惹かれてしまう自分がいる。
寺尾紗穂
寺尾沙穂の「アジアの汗」。5thアルバム『残照』に、不適切だとしてメジャーでは一部歌詞が削られたverが収録された。その後、インディーズ扱いでリリースした『放送禁止歌』がというEPにてリリースされたのが、上記の歌詞削除無しver「アジアの汗」である。日本で暮らすアジアの人々の辛さを柔らかく、早大に描いた一作。メッセージ性の強い歌が書けるSSWは最高だ。
倉橋ヨエコ
言葉の力を体現するピアノ弾き語りSSW。決して人生を肯定しない言葉選びが、彼女にしかすくえない人たちにとって、心の支えになっていたんじゃないだろうか。10年以上前の歌だが、心に訴えかける歌声は風化しない。「東京」というタイトルがついた歌は数あるが、ストレートに「帰りたい」と連呼するのはこの曲ぐらいじゃないだろうか。
ヒグチアイ
2歳からクラシックピアノを学び、フジロックなどの大型フェスにも出演している方ながら、その自己肯定感の低さが僕らの胸を打つ。語り掛けるような中音域の声は、彼女の存在を限りなく近く感じさせる。
ルーツミュージックの世界
カントリーやブルース、レゲエなどの民族的ルーツがある土着的な音楽。それがルーツミュージックだ、古い音楽を大切にするまなざしは、彼女たちの新しさとマッチし、全世代に響く普遍的な美しさを体現する。
カネコアヤノ
関取花
ユニーク。彼女の音楽性は総評せざるを得ない。パワフルな歌声とコミカルな視点から書かれた歌詞、曲がりくねった言葉の中に不意に投げ込まれるまっすぐな詞が胸を打つ。今回は彼女のコミカルな歌ではなく、大名曲「もしも僕に」をご紹介。親から子への思いをつづった歌は思わぬ展開を…?NHKみんなのうたへの楽曲提供やフジロック出演など、着実にキャリアを重ねている。
Rei
先ほどの関取花「もしも僕に」で渋いギターを弾いているのは、おじさんのスタジオミュージシャンではなく、彼女の同年代のシンガーソングライター・Reiである。衝撃的な画の力はまさに唯一無二、日本人として初めて「TED NYC」でライブを行いSXSWを始めとする国外フェスに出演するなど、世界から注目を集める存在である。こんなの出てきたらブルース(※)好きからしたら愛おしくて仕方ないだろうな。※ブルース…米国南部で発生した音楽ジャンル。ギター伴奏が特徴。
藤原さくら
ポップ・ロックとSSW
シンガーソングライターにとって、ポップスやロックバンド風の音楽と共に世に出ることはどういうことなのだろうか。市場を意識した形で、それでも自分の個性と言えるものを表出する。miwaやYUI、あいみょんもこの分野で名を成したSSWである。しかし同時にYUIは、この分野の音楽と決別するために名を捨て、FLOWER FLOWERというバンドを結成した。そういった複雑な背景を踏まえながら、今回で最もキャッチーな音楽を聴いていただきたい。
坂口有望
大阪・天王寺出身のシンガーソングライター・坂口有望(さかぐちあみ)。小学4年生から音楽を始めたという早熟の才能がもたらしたのは、15歳とは思えない詩とメロディーのセンス。2021年現在、20歳となった彼女は、人気アニメ「BORUTO」のアニメタイアップなど着実にキャリアを重ねている。
佐藤千亜妃
さとうもか
アコギ・クラギが特徴のフォーキーな音楽
フォークソングからの影響。それは多くのシンガーソングライターが受けているのではないだろうか。この項以前にご紹介したカネコアヤノ・藤原さくら・坂口有望らのギター一本での弾き語りは素晴らしいものだ。中島みゆきやあいみょんをはじめとして、このスタイルで作曲・ライブを行っているSSWは多い。どんな音楽が他にあるのか、SSWの原点ともいえるスタイルをぜひチェックしていただきたい。
青葉市子
どこか現実感を欠くような、青葉市子という存在を不確かに感じるような。そう思えるほど透明な歌声。妖精のように人を虜にする音楽を作り続けてきた。クラシックギターでの弾き語り1本で、様々なフェスなどに出演出来るのも素晴らしい。
吉澤嘉代子
バカリズムのドラマ『架空OL日記』の主題歌「月曜日戦争」で注目を集める中、2ndシングル「残ってる」がロングヒット。女子高生のとある場面を切り取った衝撃作である「残ってる」を始めとして、まるで実体験かのように様々な人物の人生を描けるのが彼女の魅力。井上陽水に影響を受けた吉澤嘉代子が作るのは、歌かそれとも文学か。
YeYe
YeYe(ィエィエ)、2011年のデビュー作「朝を開けだして、夜をとじるまで」は、作詞作曲だけでなく全ての楽器の演奏まで自身で行った究極のセルフ・プロデュース作。本作がCDショップ大賞ニューブラッド賞を受賞するなど、早い段階で世に注目されたSSW。
安藤明子
YeYeと同じく京都在住のSSW。そもそもYouTubeに動画をあまり上げない方なので、ご存じでない人も多いかもしれないが、ぜひサビまで聴いてみてほしい。特徴的な声と緩やかなリズムが、いつの間にか胸の内を満たしている。そんなアーティストだと思う。
柴田聡子
分類不能
最後に分類が難しい音楽について、ご紹介できればと思う。これだけの長さの記事を読んでいただいたあなたへの、ボーナスステージ。奇想に個性を発見していただければ、幸いです。
眉村ちあき
Doul
当初から世界を視野に入れているような活動を展開しているDoul。時に現在世界で若者のアイコンとなっているSSW・ビリーアイリッシュとも比較される彼女が、世界に繰り出せていないとも思える日本の音楽シーンをぶち破るカギとなるか。2020年9月デビューながら、すでにAmPmやKan Sano等、日本のシーンを支える音楽家たちと接触しコラボ楽曲をリリースしている。
米国のグランジ・ロックバンドNIRVANAの「All Apologies」をギター1本でカバーしている動画。アンニュイな歌声は、米国のエモラップシーンや上述したビリーアイリッシュらと共に時代の最先端にいる特性ともいえるだろう。今後、益々の躍進が期待されるシンガーソングライターだ。
大森靖子
真実を歌い上げた言葉は劇薬である。ファンに魔法をかけ、夢を見せるのがアイドルだとすれば、彼女はまさしくその正反対の存在で。だからこそ本当の言葉を聞きたいリスナーにとっての、象徴となった。「音楽は魔法ではない」と切り捨てながら、しかし彼女のエネルギーに「音楽の魔法」を感じずにはいられない。
諭吉佳作/men(ユキチカサクメン)
多才。天から多くの才能を与えられた存在。中学生の時点で10代限定コンテスト「未確認フェスティバル」に出場し、審査員特別賞に選ばれた。16歳の時点ででんぱ組.incに2曲の楽曲提供を行った。また同じく中学生の頃からシンガーソングライターとして注目されていた崎山蒼志とのコラボ楽曲は100万回以上再生されている。彼女の持ち味は、圧倒的に自由度の高い(しかしなぜか心地いい)リズムではないかと思う。リアルタイムで追いかけたい才能No.1。
中村佳穂(2回目)
おわりに
これだけの情報量の記事を最後まで読んでいただいてありがとうございます。下部にコメント欄があるので、ぜひ皆さんのオススメシンガーソングライターを記載していってください!マイナーでもメジャーでも、こ自由にどうぞ!
本記事は定期的に更新していくので、ぜひまた遊びに来てください。それでは。
コメント
東京中心に活動してるシンガーソングライター 下町ノ夏 (シタマチノナツ)さんお勧めです。
昭和歌謡的であったり、シティポップな曲を歌ってます。低音ボイスでとても魅力的です。ギターも上手でぜひ1度聴いてみて下さい!