崎山蒼志の使用ギター-オベーション
崎山蒼志が初めて日本に名を轟かせたのは中学3年生の時。ABEMA TVの企画「高校生フォークソングGP」に出演したことで、15歳とは思えない演奏力と作曲力が話題になった。
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この時使用しているのは一般にオベーションと呼ばれる、米国のオベーション・ギターカンパニーが独自設計したギターだ。音を増幅する穴(サウンド・ホール)が、真ん中ではなく上部に複数空けられているため、ヴィジュアルも独特である。オベーションによる低音域と高音域が削られたパンチのある音に、凛として時雨のTKやミッシェルのアベフトシに影響を受けたカッティング主体の彼のスタイルが加わり、独自の切れ味が生まれているのだろう。
背面は木製ではなく強化プラスチック製で、元々ヘリコプターの羽を作っていたメーカーが、その技術を楽器制作に活かそうという試みから生まれた興味深いギターだ。伝統的なアコースティック・ギターへの挑戦ともいうべきモデルは、自分で様々なコードの押さえ方や進行を編み出してきた崎山と重なるように思える。
OVATION Celebrity Elite Limited Edition CE44
先ほどの動画で使用しているのはこちらのギター。中一の時に購入し、15歳でメジャーデビューする前から使用してきた、崎山蒼志を代表する一本だ。カラーはReverse Blue Burstで、オベーション特有のメタリックな質感が映える。定価で70万以上することもある最上級モデルのAdamasではなく、見た目はよく似ているがその廉価版ともいうべきCelebrityを使っているところがリアルだ。お年玉で購入したとのこと。
サウンドホールは先ほど述べたように独特で、枯葉をイメージしたリーフ・ホールが使われている。これは単なるデザインではなく、様々な分析により音響特性を調べ、均一な音を目指した結果こうなったということだ。確かにギターの真ん中に穴をあける形が正解だと、誰かに決められるいわれもないだろう。またサウンドホールが真ん中に無いことで、1弦であれば24フレットまで演奏できるというのも、リードギターを演奏するギタリスト諸氏にとっては朗報と言える。
オベーションはピエゾピックアップを搭載しているエレアコであり、また独自の設計によってエレキともアコギとも異なる第三の音を生み出している。ヴィジュアル負けの凡庸なギターとは違い、独自の音の追求と合理化がこのデザインを生み出した側面があるところが面白い。
またオベーションらしさを持ちながらも、手の届く金額であるモデルであるため、オベーションの入門としても良いモデルだ。
OVATION C2078AXP Sapele Tobacco Burst
2019年頃は青いオベーションではなく、楽器卸の神田商会から2018年ごろに提供された上記のサンバーストのモデルを使用していた。
トップ材にエキゾチック・ウッド(※)が使用されており、優れたデザイン性が特徴のコレクター向けモデルだ。リーフホールが上部のみになっている点にも違いがある。価格は当然に先ほどのモデルより上がるが、音のゴージャスさも上がるように感じられる。
OVATION ADAMAS(特注)
崎山蒼志の才能は世に響き渡り、手の届かなかった最上位モデル・Adamasを特注したことで、彼は自分だけのギターと音を手にした。
そしてなんとモリダイラ楽器さんご協力のもと、Ovation Custom Shop で Adamasを自分なりにカスタムさせていただきました…!ひぇーーー、、宝です。優しく、深くにうねりを湛えているような音がします。大切に使います(モリダイラ楽器さん本当にありがとうございます…!!) pic.twitter.com/PJ5KRCyLI8
— 崎山蒼志 (@soushiclub) November 24, 2020
歴代のオベーションの中でも特に存在感のある音。弾き語りではなくバンドサウンドで自己表現をする崎山蒼志の動きを踏まえれば、この鋭角で煌びやかなサウンドは必須だったといえるだろう。
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オベーションの公式instagramで世界に向けて崎山蒼志のギターが発信されていた。
余談:力強いギタープレイの秘密
ところで、崎山蒼志は中学生の頃、サイゼリヤでオベーションを落としてネックが剥がれ、かなり弦高が高い状態でギターを弾いていたことがあるらしい。弦高が高いと当然ギターは鳴らしにくく、思わず殴るように力強く弾く癖がついたようだ。その時の経験が今の独自のサウンドに繋がっているのだから面白い。
弦-.010-.047のエクストラライトゲージ
アコースティックギターとしては珍しい.010-.047の細いエクストラライトゲージ(※)を使っている(メーカーは不明)。この細い弦とオベーションの組み合わせによって高められた演奏性が、彼のカッティングをしながら弾き語るスタイルを生み出しているのだろう。
D.I.-L.R.Baggs Session Acoustic D.I.
崎山蒼志の音の根幹を成すアイテム。音抜けを良くするために使用しており、ライブの際にはこのD.I.を経由して、ギターアンプ等へ出力することもあるとのこと。オベーションとセットで使用されている。
ピック
定番ピックともいえるジム・ダンロップのTORTEX(.60mm)を使用。サラサラした質感が特徴の本ピックで、オニギリ型とティアドロップ型を使い分けている。ちなみに元レッドホットチリペッパーズのジョン・フルシアンテも同じピックで同じ厚さ。
アンプ
過去のインタビューを見ると、ライブの際にはオベーションをベースアンプにも繋いでいるようだ。オベーションの代理店の提案により作り上げられたシステムとのこと。
その他の使用ギター
Ovation 1271 Viper
#崎山蒼志 クアトロツアー
🛑3rd Album Release Tour-燈火-🛑
10/12(木)@梅田クラブクアトロ
10/19(木)@渋谷クラブクアトロ
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まだの方は是非この機会に✨
クアトロでお会いしましょう🙌 pic.twitter.com/yOSEJo6dYJ— 崎山蒼志 official (@soushiclub) July 2, 2023
2021年に購入し、2023年現在ではエレキのメインギターとして活躍している。アコギと同じOvation社のギターで、一般的に使われていることを見るのはほとんどないというマニアックなモデルである。
1957 Danelectro U-1
ビザールギター好き(※)の崎山蒼志。フェンダーでもギブソンでもなく、ジム・ダンロップが1957年に製造したヴィンテージギターを選ぶところが面白い。ヴィンテージギター特有の落ち着いた音色が気に入っているとのことで、オベーションよりもしっとりとした印象。ピックアップも一つだけで渋い。敬愛するアートリンゼイらが使っていることがギターを選ぶ決め手になったとのこと。主にソロ演奏の際に使用。
Hagström Viking
崎山蒼志が中学生頃にライブで使用していたギター。スウェーデンのHagström(ハグストローム)社のモデルで、使用しているのはセミアコタイプのViking。よく見るとヘッドがストラトキャスターのような6連ペグになっていたり、ピックアップにP-90が搭載されていたり、こちらも立派なビザールギターと言える。自分でチョイスしたにしては渋すぎるので、父親のギターの可能性もある。
おわりに
ますます技巧的にそして普遍的に、崎山蒼志は進化を続けている。家ではハードオフで買った狂ったディストーションでノイズを鳴らして楽しんでいるという。オルタナティブ・ロックへのまなざしを持ちながら、オベーションというアコースティックギターを選んだ独自の選択。各所での機材のチョイス一つ一つが彼のオリジナリティを構築しているように思われる。
独自の発声、コード、メロディ。そしてその独自性を、バンドサウンドの中に溶け込ませる研鑽。多くのギタリストにとっては年下である彼から学べることの、なんと多いことか。今後も彼の躍進と進歩を追い続けたい。
崎山蒼志のメジャーデビューアルバム。初回限定版ではDVDが付属しており、長谷川白紙, 諭吉佳作/menらをゲストに迎えた「むげん・」のライブ映像などが収録されている。要チェック。
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