草野マサムネは未来を教える【スピッツ/チェリー】の歌詞解釈

DAMが発表した平成のカラオケランキング5位。多くの人に愛されたスピッツ「チェリー」の歌詞を解釈。
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愛されたチェリー

切ないながらも爽やかな失恋ソングとして、多くの人に愛されたスピッツのヒット曲「チェリー」。タイアップなしでここまでの知名度があるのは、それだけ良い曲という証拠だろう。

桜の木を意味するタイトルからもわかるように、歌われている季節は春。始まりであり終わりの象徴である。実は「チェリー」は別れによって生まれた始まりを歌った曲だった。歌詞を解釈していく。

始まりの朝

スピッツ チェリー 歌詞
スピッツの「チェリー」歌詞ページ。「チェリー」は、作詞:草野正宗、作曲:草野正宗です。

Aメロで歌われているのは始まりの朝。朝日が射し込む中で、真っ直ぐでない道をそれなりに楽しんでやっていこうとしているという歌詞だ。しかしそんな始まりの1ページは、君への想いから始まる。過去と未来の両方を見つめながら、別れを選択した男の歌なのだ

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夢追い人

黄色い砂は自分自身を指している。日本語に恒河砂(ごうがしゃ)という数の単位があることをご存じだろうか。億や兆よりもかなり多い単位なのだが、実は「ガンジス河の砂くらい多い」というニュアンスなのだ。

砂がたくさんあるものの例えとして出てくるなら、黄色い砂は黄色人種である自分自身だろう。数多くいる夢追い人の一人として、上京するイメージが浮かんでくる。きっと作詞作曲を担ったヴォーカル・草野マサムネが上京した時の夢は、立派なミュージシャンになることだったはずだ。

これは夢を優先した結果、仕方なく終わってしまった初恋の歌なのだ。だから新しい始まりの1日と失恋が同時に起こる。爽やかさと切なさが同居する、一筋縄では行かない物語だ。

過去を振り返る

しかしサビを聴けばふっきれていないことが分かる。彼は過去を忘れはしない。それどころか失恋の思い出すら力に変えようとしている。初恋の初々しさも伝わる爽やかな詞だ。草野マサムネは28歳の自分が初恋を振り返って書いたと照れくさそうに語っていたが、この共感できる甘酸っぱさは、さすがの想像力である。

過去と現在を行き来する

そして2番のAメロへ。ここでラブレターを書く手が汚れているのは、チェリーである自分の性的な衝動が混ざっているからか。これこそリアルな初恋の描写だ。

後半で描写は今に戻る。ふわふわした頭の中は、まだ君がいない現実を受け止めきれていない。冷水で気合いを入れ直すけど、流れる時に身を任せるしかない。

心の雪

そしてサビのあとのCメロ。自分の心の中には雪がある。ここまで抑え込んできた君を失った悲しみ、それは雪となって心の奥に積み重なっていた。失恋の苦しさは自分では癒せない。

しかし外は朝日が射し込む春の風景、雪解けの季節。溶けた雪は涙となって頬から流れる。彼がたどり着けなかったのは頬ではなく雪だ。2番のAメロでもまだ自覚できていなかった君を失った悲しみと、ここでようやく向き合うのだ。そして不凍だった悲しみを流しきって、新しい毎日を始めていく。美しい例えだ。

恋人に歌を送って

君を失うまでには色々あったはずだ、心を悪魔にしなければならない時もあっただろう。夢追い人である自分は、過去の草野マサムネ自身である。最初は恋人のために歌っていたのかもしれない。そんなミュージシャンは多いだろう。しかし立派なミュージシャンになるために、恋人は地元に置いていく選択をした。

それでも恋人のために歌っていた経験が、自分の夢を叶えるための力になっていく。スピッツにラブソングが多いのは、この考え方があってのものか。

未来を予言する草野マサムネ

もう一度Aメロに戻るので、歌詞を見てほしい。とあるインタビューで語っていたように、「チェリー」は草野マサムネが自分の初恋を振り返って作った曲だ。この曲のリリース前に「空も飛べるはず」「ロビンソン」がヒットし、有名ミュージシャンとなった彼が、過去の自分に未来を教えているのだ。まさか有名ミュージシャンになるなんて思ってもいない、福岡から上京したばかりだったあの日の自分に。これからは騒がしくなるぞと。

夢を追って捨てた美しき初恋

初恋が終わった直後の、君への強い思いを書いたラストサビ。上京したばかりの売れないミュージシャン(=過去の草野マサムネ)を想像して聴けば、簡単に解釈できてしまう。初恋はいつまでたっても美しい思い出なのだ。

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おわりに

過去を振り返りながら書いたリアルな詞であることを思えば、これまでの道のりを曲がりくねっていると言っているところが良い。さりげなく売れないミュージシャンとして頑張ってきた自分を讃えているのだ。

変わってしまったあとも、初恋の思い出が当時の彼を支えていた。そして今も。言葉の外にこれだけの広がりを作り出せる草野マサムネ、彼の詞世界についてはこれからも深読みしていきたいと思う。またぜひお越しください。それでは。

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