吉幾三だけじゃない!響きが面白い方言ラップ特集

吉幾三「TSUGARU」「俺ら東京さ行ぐだ」の間に、ひっそりと方言ラップソングが生まれていた!
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「TSUGARU」が流行

吉幾三が35年ぶりに方言ラップソング「TSUGARU」をリリースし、話題になっている。同じ日本語なのに、何を言っているか全く分からないのが面白い。チープな音使いで全てを茶化していくこの曲を、吉幾三はどのような気持ちで作ったのだろうか。

吉さんによると「津軽弁という方言を残したいという思いで作った」という。

引用:弘前新聞

その発想は無かった。

日本語ラップの始まりの曲として、「俺ら東京さ行ぐだ」がリリースされたのは1984年のこと。偶然ラップになったわけではなく、吉幾三は当時出始めだったアメリカ直輸入のヒップホップのレコードに着想を得てこの曲をリリースしている。

社会に対する不満をぶちまけるヒップホップの特徴が、地方の村に対する不満として自分の音楽に落とし込まれているのも、今思えば素晴らしい。

さて、「TSUGARU」は35年ぶりの方言ラップソングだったのだろうか。そんなことはない。いくつか方言ラップをご紹介させていただきたい。

新沼謙治「DISCO★PRINCE」

40年以上に渡って活躍して来たベテラン演歌歌手・新沼謙治が、「みんな大好き塊魂」というゲームのBGMとして、方言ラップを吹き込んでいる。踊れるハイクオリティな曲に仕上がっているのは、制作会社の音楽担当チームの力だろう。特にこの「塊魂」シリーズは質の高いBGMで知られているため、興味のある方はぜひ聴いて見てほしい。

島原市「島原市×西目屋村」

地方公共団体によるヒップホップの政治利用動画。どう見ても地元1ノリの良いおじいさんを二人集めただけの割には、上手くいっている。しかし6000回再生。地方創生の道のりは遠い。

ピコ太郎「WA-DO-ANBE!」

まずターゲットは何だよ。謎に英語字幕ついてるけどジャスティン・ビーバーはこれリツイートしないからな。千葉県民なのになぜか津軽弁のラップ・ソングを出すという奇行が、吉幾三を先回りするとは。

SHINGO★西成「ILL西成BLUES」

ヒップホップのミュージシャンは地元を背負う気概を持って活動する傾向が有り、地元の言葉で曲をリリースする人も多い。特に大阪出身のラッパーがよく見られるが、それはラップと関西弁の相性の良さが理由だろう。

SHINGO★西成は大阪のゲットー、西成区から現れたラッパー。語るのは日本のスラムの現況、PVには大阪に来たことが無い人なら驚くであろう、当時の西成の様子が記録されている。

小林勝行「絶対いける」

次は根強いファンの多い神戸のヒップホップから。SHINGO★西成とは少し雰囲気の違う関西弁に仕上がっているのは、これがラッパー小林勝行が普段使っている言葉(=神戸のヤンキーの話し言葉)で作られているラップだから。方言じゃないと伝わらないモノってありますよね。

USTR,MGR,羅漢「8小節ゲーム 秋田Ver.」

1:24~秋田が牙を剥く。本人たちはお遊びでやっているのだろうが、悪そうな響きがカッコいい。それぞれ秋田出身の3人、本職は地方公共団体よりイケてる。全国の市区町村の皆様、PR大使に地元に眠っているラッパーを採用してみてはいかがでしょうか。

唾奇「道-TAO- prod by. TNG」

自然に方言をいれるラッパーもいる。沖縄出身のラッパー唾奇、1:10~ば やー なちぶさーや=(お前泣き虫か?)など、その環境の中にいなければ伝わらないような言葉も、自然に入れてくる。これが俺の育った言葉だと、俺自身だと、語るように。それにしてもいい曲だ。

坂上弘「交通地獄」

どこが方言であるとは指摘しづらいが、とりあえずなまっているラッパー(?)坂上弘。大正十年生まれ、満98歳の日本最高齢ラッパーである。2009年にはVictorからメジャーデビューを果たした。

オートチューンを突破してくる美声。ファーストアルバムの名前は「千の風になる前に」。今出していたらシティポップ・ブームに乗って流行ったんじゃないかという、妙にお洒落なトラック、まさか90歳越えのミュージシャンが時代を先取りするとは。

ウルフルズ「大阪ストラット」

関西弁は早口で喋ることでラップになる(0:55~)。そして大阪人は全員早口なので、もれなくラッパーである。証明完了。

ウルフルズが大滝詠一の「福生ストラット Part2」を関西弁カバーした楽曲。トータス松本が早口で喋っているだけだが、これはもうラップである。

怒っている黒人にビートを付けるとヒップホップになってしまう動画が流行ったが、その完全下位互換である。テレビで吉本芸人が毎日関西弁を話していることを思えば、一億総ラップ時代も遠くない。

おわりに

ラップは言葉がメインの表現であるため、方言はそのままジャンルだ。方言こそラップの未来であり、可能性なのである。しかしご紹介した通り、今はネタ枠での活用が多く、表現の選択肢として方言を取り入れているラッパーはまだまだ少ない。

ヒップホップユニット・Creepy Nutsの二人は方言についてこう発言している

R-指定 自分でラップしてて「関西弁っていいな」って改めて思う瞬間はありますね。

松永 武器だよね。だってさ、2つ言語持ってるわけだから。言葉のハマりも2パターンいけるしさ。関西弁ってドスを利かせることもできるし、笑かすこともできるし、温かみを出すこともできる。

引用:音楽ナタリー

吉幾三が真面目に「TSUGARU」を作ったように、今後も自分を表す記号として、方言を取り入れるラッパーが出てくるだろう。その影響が、ラップ音楽にどのように影響してくるのか。新しい方言の発掘が待たれる。それでは。

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