【ケルト】日本で生まれた邦楽アイリッシュ/ケルトの名曲

日本に数多存在するアイリッシュ・バンドの中から、融合と洗練によって新たな音楽を生み出している曲を紹介する。
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日本のアイリッシュ/ケルトソングは新しい

アイリッシュ/ケルトは、アイルランドやケルト民族の人たちの拠り所となる民族音楽である。しかしその速く、ノリやすいメロディは日本人にも深く愛されており、これらのジャンルに属する多くのバンドが日本で活動している。

今回はその中でも、日本だからこそ生まれたと言える、アイリッシュ/ケルトに新しい要素が加えられていると思われる曲を紹介していきたい。

ハモニカクリームス/ Dance of quadra

ハーモニカ、フィドル、ドラムという珍しい編成から繰り出されるのは、ブルース×ケルトという新境地。血脈的ルーツの縛りを逃れる日本人だからこそ作れた黒いケルト。ハーモニカの音が合い過ぎて、元々ケルト音楽に使われてきたかのような違和感の無さだ。伝統から逃れた3:00~からのカオスパートは、その前の流れからぜひ聴いて頂きたい。ミシシッピ川流域の黒いブルースと、ユーラシア大陸の雄大な民族のスケール感が溶け合う良曲。

元くるりのドラムで、現bonobosのシンセ担当である田中佑司をゲストに迎えた5th Album『ステレオタイプ』がリリースされている。通常のケルト音楽には出てこないような、ステレオタイプを脱した新鮮なフレーズが溢れる名盤である。要チェック。

tricolor/Across the Border

人気ドラマ「マッサン」や「西郷どん」などのBGMにも参加する日本アイリッシュ界の星・tricolor(トリコロール)から一曲。アイリッシュソングの持つ祝祭感を前面に押し出し、メドレーで演奏されることの多いアイリッシュの様式を利用して展開に起伏を作っている。こちらも血脈的な縛りを逃れ、スウェーデンの民族楽器であるニッケルハルパが導入されているのが面白い。

どの楽器がどの音を鳴らしているのか、一度聴いただけで解きほぐすのは困難である。だからこそ聴くたびに新しい発見がある。ビッグバンドで聴くアイリッシュというのもなかなか乙なものだ。

収録アルバムはこちら

ハンバートハンバート/ホンマツテントウ虫

夫婦デュオ・ハンバートハンバートで作詞作曲を手掛ける佐藤良成は、アイリッシュバンドが来日した際にサポートで呼ばれるほどの名フィドラーである。NHKのEテレ『シャキーン!』に提供した「ホンマツテントウ虫」では、アイリッシュ風のフレーズにシュールな歌詞が乗ることで、面白みと親しみやすさが生まれる。佐野遊穂の伸びやかな声とフィドル、最小編成にもかかわらず生み出される祝祭感が聴きやすい。

バンジョーとフィドルのアイルランド・チャンピオンを擁する同国のバンド・We Banjo 3を招いた超豪華verも公開されている。繰り出される高速のフレーズと、そこから生み出される音楽の楽しさ。言葉も文化も飛び越えて一つになる6人に、音楽の素晴らしさを見る

名曲「横顔しか知らない」のケルト風アレンジverが収録されているアルバム。こちらにもWe Banjo 3が参加。ぜひ一度聴いて見てください。

John John Festival/a whole life of a bird

超絶フィドラー・johnを擁するjohn john festivalは、主にアイリッシュで使用される打楽器・バウロンの奏者が正規メンバーにいるという本格派のバンドだ。息も詰まるような高速のパッセージが交わされる「a whole life of a bird」に見えるのはその技量の高さと、そして情熱

ラテン音楽にも通じるというjohnが、高速の中につけていく緩急と強弱が生み出すグルーヴ。そのうねりが僕らの腰を揺らしていく。

超絶技巧は人を踊らせる。喫茶店から大型夏フェスまで活動の場所が多岐に渡る彼ら、ぜひとも目撃してほしい。

竹原ピストル/マスター、ポーグスかけてくれ

紅白にも出場したことのある情熱SSW・竹原ピストル、彼も意外なアイリッシュ・ソングを発表している。ケルティック・パンクの金字塔であるザ・ポーグスのVo.シェイン・マガウアンへ捧げられた一曲で、竹原ピストルの音楽性とアイリッシュが融合している。

ポーグスの代表曲であり、イギリス人の定番クリスマスソングである「Fairytale Of New York」も紹介しておこう。男女ツインヴォーカルがアイリッシュ的なフレーズとうまく組み合わされた名曲で、多くのミュージシャンに影響を与えている。

BUMP OF CHICKEN/Merry Christmas

BUMP OF CHICKENもザ・ポーグスに強い影響を受けており、同じくクリスマスをテーマにこの曲を発表している。多くの中高生がアイリッシュ・ソングに触れるきっかけとなった「Merry Christmas」では、曲調だけでなく「Fairytale Of New York」の持つ詞の切なさと最後のわずかな希望も受け継がれている

髙木文世/森は踊る

音大卒の作編曲家・髙木文世による作品。ケルト音楽の影響を感じさせながらも、ブラスバンド的なスケール感で編曲が行われているという、音圧が印象的な楽曲。4分間とは思えない圧倒的なストーリー性を、展開と音量差で作り上げているのはさすが。Sexy ZoneのライブBGMやサンリオのプロジェクトの音楽などを制作しているという経歴もうなずける。そしてMVも日本昔話的な2D世界かと思いきや、3D的に奥へと突き進んでいく面白さ。オリジナリティが素晴らしい。

坂本美雨/sundance

日本語の柔らかい歌唱とアイリッシュ音楽的なリフが組み合わされた楽曲。祝祭感が心地よい隠れたこの名曲は、坂本龍一・矢野顕子夫妻の子・坂本美雨によるもの。作・編曲はOvallのShingo Suzukiが担当。

おわりに

日本は民族的な縛りを持たず、一つの引き出しとしてアイリッシュ/ケルトを使える。その利点を活かし、様々なジャンルを越境させていく面白さ、味わっていただけただろうか。

例えばロックやパンクとはThe Corrs, Dropkick Murphysなど海外のバンドも融合をさせているが、民族音楽と民族音楽を混ぜることは少ない。それは自身のルーツを巡る事だからであろう。そういう意味では、類を見ない民族楽器ビックバンドを実現したtricolorと、ブルースとの融合を果たしたハモニカクリームスは、国外でしか生まれ得なかったバンドと言える。

日本のお家芸である多ジャンルの融合、今後もアイリッシュの新たな形を追いかけていこう。こんな形の融合もあるよ、とお教えいただける方は、ぜひとも下部のコメント欄へ。それでは。

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