佐藤千亜妃 / Summer Gate
きのこ帝国のヴォーカル・佐藤千亜妃の初ソロ作品『SickSickSickSick』から「Summer Gate」が公開。妖しさから切なさまで飲み込むきのこ帝国から、「クロノスタシス」に代表されるお洒落路線を踏襲した形だ。
バンドから解放された電子的なビートは、共同プロデューサーである砂原良徳(ex.電気グルーヴ)の協力だろう。
記念すべき1stEPは5曲収録、各種サブスクで配信中。特にタイトル曲「SickSickSickSick」は砂原の特徴が出ている。きのこ帝国ミーツテクノポップだ。
CRCK/LCKS / No Goodbye
多方面で活躍する若手ミュージシャンたちによって結成された、次世代音楽ユニットCRCK/LCKS。高度なテクニックをポップに落とし込む彼らの公開曲は、カオスとノスタルジーを兼ね備えた新しい世界だった。
世界的ジャズミュージシャン日野皓正やくるりなど、様々なミュージシャンのサポートをこなすDr.石若駿。まるでブレイクビーツのようにドラムが複雑に展開していくが、決して歌を邪魔しない。日本の宝だ。
ヴォーカル小田朋美はフジロック2018で、ceroのサポートメンバーとしても活躍。邦楽の今後を担うバンドだと思う。3rd EP『Double Rift』発売中。
韻シスト / 踊るtonight
生音HIPHOPのレジェンド・韻シストの公開曲はミラーボール輝くパーティーチューン。結成20周年で8月1日にリリースされるアルバム『IN-FINITY』のリードトラックだ。
踊れる曲でありながらベテランのスマートさも垣間見える楽曲で、10月5日から始まる全国ツアーで彼らの魅力を伝えていくことだろう。
ちなみにAmazonで購入すると韻シストの曲をミックスしたCDも無料で付いてくるらしい。面白い企画。
sora tob sakana / 発見
5月にメジャーデビューを果たしたマスロックアイドルの新曲。作曲はいつも通りハイスイノナサの照井で、重なる複雑なリズムが面白い。
夏の終わりを歌った楽曲であり、当初のコンセプト通りのノスタルジーを湛えている。メンバーは15-18歳であり、年齢と「発見」の世界が噛み合っていて良い。思春期と夏、終わりの並列関係が生む郷愁が、彼女たちの魅力と儚さを作り上げている。
7月25日発売のメジャー1stシングル『New Stranger』収録。ジャケットもゴリゴリにノスタルジックだ。
5lack / Twiligh Dive
独自路線を突き進むラッパー、5lack(スラック)の初配信シングル。同時に過去曲をサブスクに解禁し、これまでのCDでのリリースから路線変更した。
セルフプロデュースのトラックには不思議な懐かしさがあり、何度も聴きたくなる。ビートに乗せられるのは移り変わっていく世界への不安。短く、飾らない言葉が刺さる。
ジャケットはこれだ。確かなものを求めて彷徨う自分を、流浪の旅で多くの和歌を詠んだ西行法師に重ねているのだろうか。
中村佳穂 × Kan Sano / eye to eye
京都の天才・中村佳穂とorigami PRODUCTIONS所属のプロデューサー・Kan Sanoがコラボ。どちらもヴォーカリストでありピアニストである2人。コーラスワークとピアノ、選び抜かれた音像が美しい。色々な場面で流したくなる1曲だ。

8月15日に7inchでリリース。アナログ盤は売り切れが怖いので予約しておくといいかも。
tofubeats / RUN
オートチューンに愛された男tofubeats。featuring曲が目立つ彼のリリースだが、tofu自身で吹き込む声には独特の味がある。そしてシンセのストリングスは鳴りまくってるのに全然うるさくない。どういうマジックなんだろう。
作りものっぽいストリングスから、生っぽいストリングスに代わるところが意味深で素敵だ。音で思想を深読みさせる男tofubeats。
7月27日に配信とサブスクでのストリーミングが解禁されている。ジャケットはいつもの山根慶丈。愁いを帯びたまなざし。
FNCY / AOI夜
癖の強いHIPHOPユニットが始動した。ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESSらの3人によって結成されたFNCYだ。チルなトラックに投げ込まれる独特のフロウ。こんな感じでリリックが書いてあるMVも珍しい。めちゃくちゃ印象に残ったけど。
ハンバートハンバート/虎
ハンバートハンバートの名曲「虎」が10周年記念アルバム『Folk 2』で再録。ピアノ主体のしっとりしたアレンジに生まれ変わっている。そしてMVには又吉直樹が友情出演。彼の世界観に引っ張られているのか、若干シュールだ。
人の胸に残るような
そんな歌がつくれたら負けた、負けた、今日も負けだ
光るコトバ見つからない
酒だ、酒だ、飲んでしまえ
虎にもなれずに溺れる引用:虎/作詞作曲:佐藤良成
佐藤良成がメインで1曲通す曲は、ハンバートハンバートでも珍しい。そして彼が歌うからこそ作曲の苦しみを歌った詞が響いてくる。
フジロックの配信で10台くらいのカメラに抜かれながら、5分以上のMCをいつも通りこなした夫婦ユニット(Supported by SoftBank)。あの落ち着きを俺は忘れない。
おわりに
7月のYouTube公開曲の中で、特に気になったものを振り返ってみた。
意外と大変だったけど来月もやれたらいいなと思うので、また来てね。それでは。
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