ジャズ風味が楽しい平成生まれのJ-POPで肩を揺らせ踊り狂え

2010年代を代表するミュージシャンたちが発表した、オールドジャズ風の踊れる楽曲には、古き良き音楽への愛が溢れていた。
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ジャズ風の曲、結構ある件

ジャズはとっつきにくい音楽だ。というのは今は昔の話。思った以上に他ジャンルにも取り入れられている。特に昔ながらのジャズの持つ温かみや、土臭く野暮ったい魅力が積極的に取り入れられているようだ。

そして平成のミュージシャンたちも、ジャズっぽい楽曲を多数発表している。今回はその中でも、オールドジャズ風の踊れる楽曲をセレクトして皆さんにご紹介しようと思う。2010年代を代表する音楽家ばかりなので、ぜひチェックしていってほしい。

奇妙礼太郎トラベルスイング楽団『機嫌なおしておくれよ』

関西が生んだタイムカプセル、奇妙礼太郎。CMにひっぱりだこな美声の持ち主が率いるスウィング・ジャズバンドが、かつて大阪にあった。40年前からタイムスリップしてきたような素朴な温もりが素晴らしい。2016年に惜しまれつつも解散してしまったが、その輝きは色あせない。大阪出身のバンドとして、筆者はいつも一番にオススメする。

それにしても奇妙礼太郎、今の知名度が信じられないくらい凄まじい声の持ち主である。彼はスシローのCMソングも歌っている。

実はスシローのCMで演奏した大阪発のミュージシャンが、もう一組いることをご存じだろうか。

カルメラ『ロックンロールキャバレー』

ブラスバンドにジャズとロックンロールを落とし込んだエンターテイメント性溢れるこのバンドの名前は、カルメラ。大阪発、盛り上げ上手のパーティー・ジャズメンで、演奏力も素晴らしい。曲展開を最大限までわかりやすくしたことで、最高に踊れる曲となった『ロックンロール・キャバレー』は、夏フェスにひっぱりだこの彼らにとって大きな武器になっている。奇妙礼太郎とカルメラを起用したスシローすごい。

かなり特殊なコンセプトのバンドに見えるが、彼らにも原点がいる。カルメラが愛してやまない、そのバンドとは…。

ハナ肇とクレージーキャッツ『スーダラ節』

凄腕ジャズバンドでありながら、コントもこなしたエンターテイメント集団・クレイジーキャッツだ。ジャズを広め、更にお笑いの基礎まで作り上げたという伝説的なバンドである。古いジャズの持つ楽しげな雰囲気を、暖かい笑いに繋げるコロンブスの卵的な発想は、1960年代を代表する日本の娯楽と言えるだろう。

オールドなジャズ風どころかただのオールドジャズなのはご愛嬌。というのも彼らを紹介したのには理由があるのだ。実はカルメラと同様にクレイジーキャッツを敬愛する超有名なシンガーソングライターが、素晴らしいオールドジャズ風の楽曲をリリースしているので、その原点をまず見て頂きたかったというわけである。

そのミュージシャンが誰か、お分かりだろうか。

星野源『Crazy Crazy』

服装までクレイジーキャッツに寄せてゴリゴリのファン宣言をラジオでかましているのが、現代が生んだ塩味乙女キラー・星野源である。演技と音楽の才能、天に二物を与えられた彼が、コントと音楽をこなしたクレイジーキャッツに憧れるのは、ごく自然な流れだ。NHKのコント番組『LIFE』で毎週納税者を笑わせていたのも、彼らへの憧れが少なからずあるだろう。

ちなみにベースを弾いているのはダウンタウン浜田の息子であるハマ・オカモトで、音楽とお笑いの懸け橋となったクレイジーキャッツの流れを感じる。

同じくピアノ主体でジャジーな踊れる楽曲が、星野源のミュージシャン/俳優としての転機となった『地獄でなぜ悪い』だ。自身が出演した同名映画の主題歌として、彼のマルチアーティストとしての側面にスポットライトが当てられることとなった。奇妙礼太郎しかり、カルメラしかり、昔の音楽を大切にしている人ほど、こういう50~60年代ノリの楽曲をリリースする。

オールドジャズのリズムが持つうねりを、ギター一本で奏でる天才シンガーソングライターがいることをご存じだろうか。

大石昌良『ピエロ』

『けものフレンズ』という2017年最も話題となったアニメの主題歌を作り、ミュージックステーションに出演したこともある大石昌良(オーイシマサヨシ)。ギターを弾かない人にとっては分かりにくいかもしれないが、このフレーズを弾きながら歌うのは、天才を通り越して奇人の域である。古き良きジャズのグルーヴが、なぜか普通のアコギ1本から発されている。質の高いライブ演奏動画で、トランペットの真似がやたら上手い。

眼鏡と髪型のせいでアニソン界の星野源と呼ばれている彼だが、この楽曲に関しては向いている方向も同じだ。

ちなみにアニソンと関連する、ジャズ風味の楽しい楽曲がもうひとつある。

中塚武『Your Voice feat. 土岐麻子』

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ジャズをベースにした音楽性が特徴的な中塚武は、ドイツでデビューを果たし日本へと帰ってきたという面白い経歴の持ち主。90年代末~2000年代前半に活躍したCymbalsのヴォーカル・土岐麻子を招き、この可愛い楽曲をリリースした。

可愛さが有り余ったのだろうか。女性声優たちのカバーがアニメ『きんいろモザイク』のエンディング・テーマとして採用された。ジャズのビッグ・バンド的な楽しさが強化されているのが素晴らしい。アニメもジャズもエンターテイメントという蝶つがいで繋がっているのだ。

最後に2018年に各所で大絶賛を巻き起こした、一人のシンガーソングライターの楽曲を試聴していただきたい。

折坂悠太『逢引』

平成元年生まれ、鳥取育ちのシンガーソングライターである折坂悠太。当時無名だったにも関わらず、旋風を音楽好きの間で巻き起こし、アジカンGotchが創設した音楽アワードにノミネートされたアルバム『平成』を2018年にリリース。その不思議なアルバムジャケットも相まって、知名度と顔の認知度を急上昇させた。

彼の身勝手な平成の締めくくりが、いつしか音楽好きの間でも一時代の結末となっていた。このアルバムのおかげで、なんか平成っていい時代だったなと思えた。傑作だ。

おわりに

2010年代に活躍したミュージシャンを中心にご紹介した。こうして見ると大豊作である。しかし踊れる楽曲にありがちな軽薄さが無いのは、オールドジャズ風味の楽曲を作れる彼らの、古い音楽への尊敬のまなざしがあってこそだろう。

かつての音楽から学び、その良いところをすくい取って。平成の音楽は次のステージ、令和の世の中へと向かっていくことになる。いったいどんな音楽が生まれていくのだろうか。なんとなく悪い方にはいかないんじゃないだろうか、という気がしている。それでは。

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