今最も売れているアーティストと言えば「米津玄師」でまず間違いないだろう。曲を出せば1日でYouTube再生回数1000万回を突破。「Lemon」なんかはもう4億回に到達する勢いだ。ヤベー。単純にイかれてる。4億って数字わかります??これだけぶっ飛んだ数字だと理解しずらいけど、単純に日本人全員が一人4回聞いてる計算。地球人の17人に一人が聞いてる計算。
ちなみにジャスティン・ビーバーの「Sorry」は31億回。地球人の二人に一人ぐらい聞いている計算。明日地球に隕石が落ちるニュースがあったとしてもこんな視聴回数は出なそう。ごめん比較対象としてめちゃくちゃ間違えた。
確かにね。「Lemon」は良い。普通に曲はいい。でもじゃああいみょんの「マリーゴールド」(再生回数約8000万回)や、RADWIMPSの「前前前世」(2.1億回)より良い曲か?と聞かれると正直…?な気はする。
つまり「Lemon」単体で考えたときに、「そんなに大ヒットするほど?」と言うのが本音だ。例えば「Lemon」は彼の全ての曲の中で最も良い曲かと問うと、多分ガチのファンほど「そうではない」と答える人が多いと思う。
僕としても米津玄師の名曲は「ゴーゴー幽霊船」など、『YANKEE』以前の曲だと思う。
今日の記事ではそれらを踏まえて、「なぜ今」米津玄師がこれほどまでウケるのか?を考察したい。
米津玄師は理解不能だった
ファーストアルバム『diorama』のころの彼はその異常性が売りだった。
不協和音を使った聞きなれない伴奏、歪ませた声、理解しづらい歌詞。彼にしか出せない音を作っていた。だからこそ魅力的でありつつも、多くの人が凄いのはわかるけど“良いか悪い”かは判断できないと言う状態だった。
そりゃーそうだ。だって誰もやっていなかった音楽なんだから。例えばゴッホは死んでから評価が高まったと言われているけどもまさにあの感じ。世間の理解が当人に追いついていないという状況。新しすぎてどう評価して良いのかわからない。
世間というのはある程度周りの評価が定まってから自分の評価を決める人が多いために、全く新しいものには評価が追いつかないのだ。だからある程度音楽に詳しい人だけが評価して、大衆には響かない音楽だった。
みんな天才を理解したかった
それがセカンドアルバム『YANKEE』で、少し彼は大衆に歩み寄ってくれた。リード曲「アイネクライネ」なんかはCM曲にも使われ、恋愛歌詞も理解しやすく彼特有の不協和音もかなり抑えめでMVもとっつきやすいイラスト。大衆にとって理解しやすい楽曲となった。
本来『YANKEE』に収録されてもおかしくないタイミングのシングル曲、米津玄師トップクラスの難解曲「ポッピンアパシー」が収録されなかったことを見ても大衆に届けるためのアルバムということが見て取れる。
そこから彼は「orion」、「ピースサイン」など、彼独自の異常性をかなり抑えた曲を発売し、一定の人気を獲得した。ところがこの辺りの曲は、「Lemon」と再生回数を比較した時に、「orion(1億回)」、「ピースサイン(1.5億回)」と倍以上の差がある。(いやまぁゆうて普通のアーティストからしたらとんでもないヒットなんですが…)
この差は、「orion」、「ピースサイン」等は“米津玄師が大衆に歩み寄ってきたことが明確だったから”だ。大衆だってプライドってもんがある。どんなアホだって「俺はアホじゃない」と信じて生きてるのが人間ってもんだ。
だからいくら彼が天才だからといって、「これなら理解できるでしょ?」という意志が明確に見て取れる上記の曲は大衆には響かなかったのだ。
大衆は“天才を理解したい”のであって“天才に歩み寄ってほしい”わけではないのだから。
「Lemon」は米津玄師を理解した気になれるちょうど良い小難しさ
そして満を辞して発表される「Lemon」。
いやね、すげーね。すげー。
何がすげーって上記で説明したような「天才性と大衆性」がちょうど真ん中でマッチした曲。合いの手のように入れられる「ウェ」という謎の音に反して理解しやすい歌詞。教会で撮られた“MVの神秘性”に反して“童謡のように馴染みやすい曲調”。
もうね、大衆の求める“天才の理解できない格好良さ”と“アホでも理解できる接しやすさ”が共存しているような曲。カラオケで歌いやすいというのも大きい。
つまり「Lemon」は理解できなかった天才を理解した気持ちになれるちょうどいい曲だった。
異常なアーティストの普通な曲ほど売れる
米津玄師だけでなく、例えば椎名林檎、BUMP OF CHICKENなどのように、一般とはかけ離れた音楽性をもつアーティストは多くいる。
ところが、そんな彼らの代表曲は、椎名林檎であれば「ここでキスして」BUMP OF CHICKENであれば「天体観測」など、その個性をある程度抑えた楽曲ほどヒットに繋がっている。
これは上記のように、マニアックな人に評価されているアーティストを、大衆は理解したい気持ちを持っていることからだと思う。理解したいけど良さがわからない。そんな人たちに、ちょうど少し難解さがありながらもギリギリ理解しやすい楽曲がリリースされると、それまでの「理解したい」という気持ちがそのままヒットに繋がるのではないかと推測される。
おそらく「Lemon」も、そんな大衆の「米津玄師が素晴らしいアーティストという声はよく聞くけど、なんとなく自分では良さが理解できないけど理解できたらかっこいい。」という欲求のど真ん中にぶち込まれた楽曲なのだと思う。
コメント
だって誰もやっていなかった音楽なんだから。
↑こういう曲、大量にあると思います。
だって誰もやっていなかった音楽なんだから。
↑こういう曲世の中に大量にあります。