浪漫革命
京都発、はっぴいえんどの『風街ろまん』とandymoriの『革命』を合わせて浪漫革命。「青い春」では、ウォーキングベースとドラムのビートがandymoriを思わせるが、同時にギターやコーラスワークにはブラックミュージックへのまなざしも見られる。1960年代から2010年代まで多様なルーツを感じさせつつも、現代にアップデートした曲を多数発表してきた彼らの、青春を切り取った一曲。
「青い春」収録、初期衝動溢れる1stEP アマゾンプライム会員は無料で聴ける。
The Songbards
andymoriの楽譜の貸し借りから始まり、前身バンドの結成に繋がったというThe Songbards。andymoriだけでなく、その根っこにあるoasisやThe BeatlesなどのUKロックをルーツに内包する。彼らの楽曲の中で、特に活動初期の2017年ごろにリリースされた「雨に唄えば」をはじめとするいくつかの曲には、andymoriの影響を感じさせる。様々な音楽を通過し、まるで別のバンドのように発表毎にジャンルを変えながらも、心地よさを蝶番として良曲をリリースしてきたThe Songbards。そのスタート地点ともいえる楽曲。
Cody・Lee(李)
オーディション枠で「BAY CAMP2019」に出演したCody Lee(李)というバンドが2020年12月にリリースした1stフルアルバム『生活のニュース』。その特徴は彼らがリスペクトするバンドたちのオマージュが歌詞に多分に盛り込まれていることだ。柔らかい男女ツインボーカルは愛しさすら感じさせる。その中の1曲「桜町」では5時のサイレンというフレーズがサビに登場する。PVにはandymoriのバッグも登場し、andymoriの「1984」という曲で鳴り響いていたあの日のサイレンを思い出させる。
彼らはこの他にも「百貫デブにはサプリメントを」と歌う曲があったりして、andymoriへのリスペクトを示している。Cody Lee(李)ってバンド名の由来はなんだろう。andymoriはアンディーウォーホル(画家)とメメントモリ(藤原新也による写真集)を繋げた造語なのだけど、彼らもCodyとLeeを併せてCody Lee(李)なのだろうか。これは調べても出てこなかった。
マイアミパーティー
筆者激推しバンド・マイアミパーティー。北海道は札幌発の4人組が圧倒的な熱量で伝えてくる楽曲が特徴だが、バンド名はandymoriの「マイアミソング」(未発表曲)とカナダのバンド、ケイジャン・ダンス・パーティが由来になっているとのこと。
マイアミパーティーはメンバーそれぞれがソングライターでもあるバンドであり、邦ロックをルーツとするVo.さくらいたかよし作曲の作品とは対照的に、Ba.セルジオの曲は彼のルーツであるポストロック風味に仕上がっていたりする。一枚のアルバムですら幅の広さが楽しめるバンドである。
多様なジャンルをマイアミパーティーという個性の中に落とし込み、熱量の中でまとめあげる魅力を感じるために、ぜひアルバムを通して聴いていただきたい。
インナージャーニー
andymoriを愛するバンド、インナージャーニー。andymoriの曲「インナージャーニー」からバンド名を付けた筋金入り。10代限定フェス「未確認フェスティバル」に出場した和光高校(※)出身の4人組は、2020年に結成1周年を迎えたばかりの注目株だ。ドラム担当のkaitoは桜井和寿(Mr.Children)の息子。
動画で流れている曲「クリームソーダ」にも、その他の楽曲にも強いandymoriの影響が見られる。ゴリゴリ動くベースラインとシンプルなドラム、そして歌の節回しすらも彼らを思わせる。
インナージャーニーの独自性として、気だるさを感じる心象風景と、爽やかなクリームソーダというある種相反する存在を同居させられる点があげられるだろう。六畳一間から始まるこの楽曲を、ビールやコンドームではなくクリームソーダでまとめあげられるのは、爽やかさの中で物憂げに青春を送った10代の世界観特有のものだ。それは同時にandymoriの詞にあった、ナイーブな心象風景も思い出させる。
2014年に惜しまれながら解散したandymoriのオリジナルメンバーは、その翌年にALという新バンドを結成し現在まで音楽活動を続けてきた。彼らは「会いに行くよ」という楽曲を発表しているのだが、インナージャーニーはそのアンサーソングとも考えられる「会いに行け!」という楽曲を2020年にデジタル・リリースしている。
2020年12月9日にインナージャーニーがリリースした1stEP「片手に花束を」。このフレーズは「会いに行け!」のサビにも現れる。「花束を片手に、走って会いに行け」という力強いメッセージは、インナージャーニーの半分が、andymoriへのリスペクトにより作り上げられていることを思わせる。なぜなら「花束」とは、ALがバンド結成後初めてMVを公開した楽曲のタイトルなのだから。
結成1年、ソングライターが10代の4人組はこの先どこへ向かうのか、今後に強い期待を覚える。
帝国喫茶
関西大学軽音楽部をルーツに持つ帝国喫茶。メンバー全員が共通して影響を受けたアーティストを問われ「andymori」と答えた彼らの楽曲には、確かにandymoriからの影響が感じられる。特に歌メロやサビ終わりの感想で歌う部分など。アートワークのかわいらしさも含め、注目していきたいバンド。
あいみょん
今をときめくシンガーソングライター・あいみょんは強くandymoriへのリスペクトを示している。「夢追いベンガル」というタイトルはandymoriの「ベンガルトラとウイスキー」を思わせるし、語尾に気だるさをにじませる歌い方は、同バンドのVo.小山田壮平の特徴でもある。
本曲のインタビューに際して、菅田将暉と共に小山田壮平のソロライブを見に行ったエピソードを語るなど、あいみょんはandymoriのファンであることを公言している。
ところで、あいみょんの初期のヒット曲と言えば「君はロックを聴かない」である。タイトル通りロック音楽を聴かない想い人へのエゴや葛藤を歌った楽曲だ。YouTubeのコメント欄やTwitterで「夢追いベンガル」の反響をチェックしていると、andymoriに触れる声は少ないことに気づく。あいみょんリスナーの中には、邦ロックに触れずに生きてきた方も多いだろう。まさにファンが「君はロックを聴かない」状態に陥る、ある種の皮肉な状況を生み出している楽曲である。
菅田将暉
小山田壮平さんありがとうございました!永久保存します。#菅田将暉ANN pic.twitter.com/iKkMkHRbEP
— 菅田将暉 (@sudaofficial) September 14, 2020
過去にTV番組でandymoriからの影響を語ったことがある菅田将暉。自身のラジオ「菅田将暉のオールナイトニッポン」へ小山田壮平を呼ぶなど、親交もあるようだ。
芸人もリスペクト
駆け抜けて軽トラ
芸人にもandymoriフォロワーがいる。カトパン激似芸人としても話題になった駆け抜けて軽トラのコンビ名の由来はandymori「グロリアス軽トラ」と銀杏BOYZ「駆け抜けて性春」だ。
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どこかでコンビ名の由来を明かしているのかは定かではないのだが、彼女たちの配信ラジオのタイトルが、それぞれの曲名を入れ替えた『グロリアス性春』だったので、間違いないのだろう。
ファンファーレと熱狂
ファンファーレと熱狂というandymoriの代表曲と同名のコンビもいる。andymoriが影響を与えた世代が、若手芸人や音楽家として活動を始めているのである。
おわりに
自分が青春時代に聴いていた音楽がこんなにも同時代を生きた誰かの青春で、これだけの影響を与えていることを思うと、時間の流れを感じずにはいられない。池田エライザやBiSHのセントチヒロ・チッチなど、今回紹介しきれなかったandymoriに影響を受けたミュージシャンや著名人もたくさんいた。
誰かにとってのTHE BLUE HEARTSが、誰かにとっての銀杏BOYZが、僕らにとってのandymoriである。彼らが一つの時代において青春を象徴する音楽であったなら、これからもandymoriの影響は日本を席巻し続けるだろう。確実にギターロックがヒットチャートから消えつつある今でも、あの日のヒーローたちは形を変え、活躍し続けている。
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