UNISON SQUARE GARDENの特徴
UNISON SQUARE GARDENのルーツを知るうえで重要なのは、彼らの特徴を知ることだ。いくつか要素を抜き出してみた。
- 楽曲制作を担うベーシスト・田淵智也が生み出した独特な楽曲群とライブ・パフォーマンス
- ギターヴォーカル・斎藤宏介が弾く、歌いながらとは思えないほどの超絶ギター
- ドラム・鈴木貴雄の、異常なまでの連打と、歌を邪魔しないバランス
この順番でルーツを解き明かしていこうと思う。まずは田淵から。
ルーツ①↑THE HIGH-LOWS↓
90年代を若者として生きた人たちの青春、THE HIGH-LOWS(ザ・ハイロウズ)。田淵智也がルーツとして挙げているバンドである。「リンダリンダ」「TRAIN-TRAIN」などのヒットで知られるTHE BLUE HEARTSのフロントマン二人が、同バンド解散後に結成し、1995年から2005年まで活動した。
ライブ・パフォーマンスに影響
思うに曲の中身ではなく、ライブ・パフォーマンスやバンドとしての姿勢の部分に影響を受けているように思う。THE HIGH-LOWSやその源流となったTHE BLUE HEARTSは、生粋のライブ・バンドである。
実際に田淵智也のベーシストとしてのライブ・パフォーマンスは、UNISON SQUARE GARDENのライブの見どころの一つになっている。彼にとってカッコよくライブするバンドこそTHE HIGH-LOWSであり、そのためには激しく動くパフォーマンスが必要だったのだ。
THE HIGH-LOWSは解散したが、フロントマン二人はザ・クロマニヨンズというバンドを結成し今も活動を続けている。田渕は今でもよくライブに行くそうだ。彼の重要なルーツと言えるだろう。
ルーツ②the pillows
田渕がクロマニヨンズ並みによくライブに行くのが、このthe pillows(ザ・ピロウズ)である。2019年で結成30年を迎えるこのベテランバンドは、BUMP OF CHICKEN・ELLE GARDEN・Base Ball Bearなどの邦ロックバンドがカバー曲をリリースするなど、多くの人に愛されてきた。
歌詞と音楽性に見る影響
the pillowsには特徴がある。ポップな音楽性の中に、どこか反骨心を感じる歌詞である。ポップではあるがそちらに流され過ぎず、ロックではあるがそちらに身を委ねない。ラストサビの歌詞、誰かに流されずに自分の道を歩む決意は、「シュガーソングとビターステップ」の2番の歌詞の自分の音楽が道具のように扱われることで抱く反骨心に通じる。
自分の音楽は曲げない。決して大ヒットは飛ばせなくても、自分の道だけを歩み続けてきた姿勢は、田淵に大きな影響を与えている。UNISON SQUARE GARDENはthe pillows結成25周年のトリビュート・アルバムで、この「Fool On The Planet」のカバーを提供している。ライブで演奏することも。
影響を受けている楽曲
UNISON SQUARE GARDENの11thシングル「10% roll, 10% romance」のカップリング曲、「RUNNERS HIGH REPRISE」では田渕のthe pillows愛が爆発。そもそもREPRISEとは反復・再現という意味であり、the pillowsの「RUNNERS HIGH」をベースに彼らの楽曲を再構成する試みである。
「RUNNERS HIGH」の歌詞の鼓動のフレーズを受けて、「RUNNERS HIGH REPRISE」の鼓動の部分を聴くと、胸に熱いものがこみ上げてくる。これこそ田渕のルーツなのだ。歌詞やコード、コーラスなど、the pillowsの楽曲の要素を10曲ほど詰め込んだという「RUNNERS HIGH REPRISE」。シングルカップリング曲なので、カップリング曲を集めたアルバム『Bee side Sea side』にも収録されている。
the pillowsもUNISONの楽曲をカバー
2019/07/24にリリースされた、UNISON SQUARE GARDEN 15周年記念のトリビュート・アルバムでは、なんとthe pillowsがUNISONの「シューゲイザースピーカー」をカバー。
田淵智也も大喜びだろう。その他にも東京スカパラダイスオーケストラや、クリープハイプなどの豪華メンバーが参加しており、必聴の一枚になっている。2枚組になっており、本人のスタジオ・ライブ盤も付いてくる。
次はギターヴォーカル・斎藤宏介のルーツについて。
ルーツ③Syrup16g
Syrup16g(シロップじゅうろくグラム)は根強いファンの多い3ピースロック・バンド。斎藤宏介が影響を受けていると発言している。実は3ピースのギターヴォーカルでソロを弾く人は、意外と少ない。syrup16gのGt.Vo.五十嵐隆は上記楽曲「天才」のように、歌の隙間にコードではなくフレーズをいれており、非常に技巧的である。
ギターが単調になるのは歌っているからという言い訳をしたくないと語っている斉藤。実際にギターのフレーズに複雑なものを入れられず、同じような曲ばかりになってしまっている3ピースバンドは多い。ベースと掛け合いのようになっている複雑なアレンジにも、少なからぬ影響が見て取れるのではないだろうか。
ルーツ④ フュージョン
ドラム・鈴木貴雄は何に影響を受けているのだろうか。やはり高校1年生の時から練習してきた、田淵の作る楽曲群であると、筆者は思う。テクニカルな3ピース楽曲を叩く日々の中で、鈴木は手数(叩く回数)が人より多くなっていったのだ。
某インタビューではフュージョン(ジャズとロックを掛け合わせたジャンル、上記のように非常にテクニカル)を聴いていると答えており、こういった音楽を聴いて複雑なフレージングを学んでいることがわかる。
手数があまりにも多いのに、テクニックよりは観客を躍らせることに主軸を置いているような斉藤のドラムは、ジャズやフュージョンのダンスミュージックとしての側面に通ずる。Dave Weckl(デイヴ・ウェックル)という有名なドラマーの動画をご覧いただきたい、複雑なフレーズながら、どこかノレるのである。
その他のルーツについてはこちらの雑誌でインタビューに答えているそう。Kindle Unlimitedの対象となっているため、登録している方は追加料金なしで読める。
ちなみに初回30日間は無料になっているので、読みたい方はこちらのリンクからどうぞ。スマホでもアプリいれれば読めます。
おわりに
UNISON SQUARE GARDENの複雑な楽曲も、解きほぐしてみればいくつかのルーツに分けることが出来た。ここに上がってこない部分は、彼らがそのキャリアの中で獲得してきた側面と言えるのかもしれない。例えば斉藤のハイトーンなヴォーカルや、手数が多いのに基礎にダンスのリズムがあるような独特のノリやすいビートだ。その独特な側面と、彼らが他のアーティストから受けてきた影響、両方を把握しておくと、今後新曲を聴く際に、また違った見方が出来るようになるかもしれない。
2019/10/06に公開された新曲「Phantom Joke」には、今日述べてきた特徴が全て現れている。こちらも併せて、チェックしておこう。それでは。
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