平成最後の夏、星野源『アイデア』は邦楽の新時代を告げる

8月19日に公開された『アイデア』は、平成の”先”を見据えていた!星野源が生んだ革新的な表現とは?
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『アイデア』

3日で250万回再生された最強MVがこちら。デジタル配信のシングルで史上最高の売り上げを達成し、各配信サイトで21冠のトップに輝いたそうだ。

その速報に驚くどころか、納得する自分がいる。星野源のこれまでを全て詰め込んだ曲だし、4月から朝ドラに使われてきて、ファン待望の配信でもあったからだ。

配信日まで、プロモーションですら『アイデア』が流れたことは無かったのである。蓋を開けてみれば、フルで聴いて初めてその真価がわかる曲だったのだ。

どこに凄さを感じるのか、順番に書いていきたい。

世代を乗り越えたビート

『アイデア』はイントロからDr.河村”カースケ”智康の鋭く印象的なドラムが続いていく。日本のドラマーで上位数パーセントに属するテクニックを持った大ベテランだ。

曲の中核を成すかに思えた彼のドラムが、2番でまさかの若手トラックメイカーSTUTSへとバトンタッチ。そんな発想、常人なら思いつかない。あのカースケを休ませるなんて。

朝ドラ『半分、青い。』のオープニングには、前半のバンド演奏しか使われていなかった。STUTS参戦はファンに大きな衝撃を与えたことだろう。

STUTSは唯一無二の魅力を持ったミュージシャンだ。シンセ(MPC)を使って、その場でボタンを叩いてビートを作ってしまう凄腕なのである。

NYのハーレム地区でライブをしていた筋金入りのMPCプレイヤーであり、これまで日本の音楽シーンにいなかった新しいミュージシャンと言えるだろう。

『アイデア』のすごい所は、邦楽を支え続けてきた凄腕ドラマーのビートと、これまでメジャーシーンに表れてこなかった若手トラックメイカーのビートを組み合わせたことにある。

これを邦楽新時代の到来と呼ばずして、なんと呼べばいいのか。

攻めた表現

ビートのバトンタッチも踏まえて、この曲の表現は攻めている。

例えば2番終わりにやってくる間奏はほぼメロディが無く、ビートのみである。全ての音はリズムを生み出すためのものだ。HIPHOPならまだしも、こんなポップス今まで無かった。

しかもその後にやってくるのは弾き語りである。MVでは更に星野源がやってくるまでの間に無音の時間も挟まれていて、複雑な曲構成になっている。

バンド→電子音楽→弾き語り→バンド、ということになる。

こんなややこしい構成の歌が、ヒットチャート入り間違いなしの期待値なのである。日本の音楽の常識を変えかねない。

アイデア/星野源
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セルフプロデュース

星野源はここまで自力で突っ走ってきた。ポップスはミュージシャンが書いた曲を、プロデューサーがアレンジして世に出すことが多い。つんく、奥田民生、小室哲哉など、名プロデューサーたちが平成の音楽シーンを作ってきた。

『アイデア』はプロデューサーの手が入っていない曲なのだ。既存の型を外れて1人でポップスを作ることが出来るという、可能性を示したのである。

星野源の全てがここに

セルフプロデュースであることを示すように、星野源のキャリアが全て詰め込まれたような曲になっている。

1番で『恋』のように陽気な歌詞が、2番になると虚しさに飲み込まれていく。星野源の1stアルバムにあったような、暗い歌詞である。前半で咲いた花は後半で踏みつぶされ、自己の外面/内面が対比されている。

役者兼俳優として作り上げた外向きの顔、その奥にある弱気な内面は、彼のラジオなんかを聞いていると感じられる。生き馬の目を抜く芸能界で突然スターとなった星野源は、傷つき、苦しんでいるのだ。

スターとしての外面/内気な本来の自分、2つの側面を彼はどうまとめたのか。ラストサビ前には原点である、ギター1本の弾き語りが挟まれる。そこでようやく星野源の歌も前を向き、未来への想いを綴る。

このように3部構成になっていて、内容に合わせて音がきっぱりと使い分けられている。

そこにSAKEROCK時代から使ってきたマリンバや、「恋」で見せた長岡亮介の効果音みたいなギター。これまでの歌詞の引用(おはよう→Crazy Crazyなどなど)。MVのダンス(振り付けは三浦大知)も合わさっている。星野源の総集編のような曲になっているのだ。

ここまでの密度になったのは、星野源以外の手が入っていないからだろう。一人で自分というものと向き合わなければ、ここまでの密度の曲は生まれない。作品を通じて、セルフプロデュースの良さを世間に発信した。まさにプロデュース主体の音楽シーンを、平成から次の時代に変えていくような1曲なのだ。

おわりに

星野源としてやってきたこと、もっと言えばSAKEROCKの時からやってきたこと。そして『YELLOW DANCER』以降、作ってきたイエローミュージックというもの。すべてを含み、すべてを越え、すべてを壊し、未来に進むパワーを持つ楽曲、そんなものを作りたいと思いました。

引用:『アイデア』特設サイト

これは星野源が『アイデア』発売にあたって寄せたコメントだ。ここに書かれている通り、星野源はこれまでの自分と新しい試み、全てを集結させて、平成の音楽シーンを次の時代へとバトンタッチしようとした。

その試みは成功していると、僕は思います。『アイデア』という言葉が示す無限の可能性の元へ、平成の音楽シーンを引っ張っていくことでしょう。この曲は未来のポップスでありながら、星野源の歴史でもあった

それに配信リリースでこんなに売ってしまったら、それこそ日本の音楽シーンが変わっちゃうかもしれない。星野源の未来像であり、平成の音楽シーンを先に進める『アイデア』、聴くたびに新しい発見がある良曲だ。それではまた。

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