【ライブレポ】中村佳穂の大阪ワンマンに見た進化と原点

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2018年8月3日。中村佳穂のワンマンライブが心斎橋JANUSで行われた。〈pray play for U〉と銘打たれたこの企画で目撃した、彼女たちの進化とは。

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出演メンバー

今回の中村佳穂バンドは恒例のメンバー。

  • Dr. 深谷雄一(レミ街)
  • Key. 荒木正比呂(レミ街)
  • Gt. 西田修大(吉田ヨウヘイgroup)
  • Cho. 北川まさひろ
  • V.Per. RyoTracks
  • Per. スティーヴエトウ

中村佳穂が全国から集めたメンツだ。ドラクエみたいに、旅を続けて増やしてきた仲間たち。こんな形でバンドが出来ていくのは珍しい。

出店もあった。パン屋さん、植物のアクセサリー屋さん、お茶屋さん、アジア系の雑貨屋さんなどなど。中村佳穂の友だちである。ライブするたびに仲間を増やしてる。

前日に野村雅夫が中村佳穂をFM802でかけていたらしいし、意外なところへ中村佳穂の輪は広がっている。

アドリブ

彼女のライブはアドリブ主体だ。歌と語りを織り交ぜた即興性の高い演奏は、次世代の矢野顕子と言われるほどクオリティが高い。ほぼセッションのような形で進んでいくライブ。若手からベテランまで織り交ざったミュージシャンたちが音を重ねる。

〈pray play for U〉では演者が全員内向きで演奏し、その周りを観客が取り囲む形になっている。よりセッションバンドらしいライブのスタイルで、会場の一体感も高まっていく。

新アルバムと原点

この日共演した仲間たちの力を借りて、彼女は2年半ぶりに新しいアルバムをリリースする。

『AINOU』と銘打たれたアルバムを制作するため、関東に長期滞在していた中村佳穂。JANUSでのライブで出てきた言葉は、「関西は安心する」だった。

ホームで伸び伸びと歌う彼女を、ずっと支えてきたのがスティーブエトウだ。彼女を初期からサポートしてきたベテランパーカッショニストである。

先日のフジロック2018でも奥田民生や甲本ヒロトと共演し、YouTubeで配信までされた。チェッカーズやら布袋寅泰やら、日本国民全員が知らないうちに彼の音を聴いているだろう

今回はスティーヴエトウを、あえてスペシャルゲストという形にしていた。ライブを一部/二部に分け、二部から彼を登場させるというスタイルだ。

まさか彼のソロ(約20分!)で二部が始まるとは…。俺も驚いたし、観客みんな驚いたし、中村佳穂も驚いていたと思う。一人で20分もアドリブし続ける余裕と、その実験性に。

電子パーカッションから段ボール、ヴォイスチェンジにドラム缶まで使いこなす圧巻のパフォーマンスは会場を呑み込み、中村佳穂と合流。

数年前に何度も目にしたスタイル。ピアノと段ボールの2人組で「夜のダンス」を演奏した。新アルバムのリリースを発表した日に、原点へと戻ったのである。今日の段ボールソロは本当に熱かった…。

進化

中村佳穂バンドは、明らかに進化していた。CRCK/LCKSからジャズを抜いて、それぞれのルーツを詰め込んだようなポップでカオスな曲『GUM』。馬喰町バンドのような言語感覚『そのいのち』。D’Angeloみたいな深いビートの曲もあった。

大体4割くらいが新曲だった今日のライブ。次のアルバムが今までよりも、レンジの広い作品になることが分かって楽しみが増した。

彼女は仲間を増やすと同時に、様々な才能を吸収しているのである。この間はKan Sanoと曲を作っていたし、彼女は進化のチャンスを引き寄せている。

そして今日のライブで思ったのが、彼女たちがバンドとして成熟しつつあるということだ。中村佳穂のワンマン体制では無くなっていた。誰をきっかけに曲が展開していくのかわからない緊張感があった。一匹の龍が、多頭の龍へと姿を変えたのである。

(超美声な)Cho. 北川まさひろの歌から始まる曲もあったし、Dr.深谷雄一の深いビートが引っ張る曲もあった。誰もがメンバーでありリーダーだった。

特に存在感があったのは吉田ヨウヘイgroupで活躍するGt.西田修大。1:20~あたりやラストを聴いてもらえればわかるが、型にはまらないギタリストだ。どうやって出してるのかわからないような音を、さも当然のようにアドリブでハメてくる。しかもめちゃくちゃ熱い演奏をする。

言わずもがなのスティーブエトウ。声だけなのに万能なRyo Tracks。凄まじいシンセ使いでにこやかな荒木正比呂(その音ってそうやって使うんだ!みたいな)超美声かつアドリブでコーラスを入れる北川まさひろ。ヤバい人たちを御しつつ、遊びもめちゃくちゃ入れる深谷雄一。

新アルバム『AINOU』でも同じメンツが共演してるらしい。7人もいるのにミニマルな曲が演奏出来たり、何度もブレイク(=無音)が挟まれたり、ライブは阿吽の呼吸の応酬だ。何度もヤバい演奏をしてきたからこそ、彼らは一つのバンドとして成熟しつつある。

アンコール

アンコールでは『AINOU』収録曲で唯一公開されていた「忘れっぽい天使」と「そのいのち」を連続で演奏。さすがにこの動画のような合唱は起きなかったが、徐々にそうなっていくだろう。

(この三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONでの演奏で、事前に観客に音源を渡し、コーラスを練習してきてもらって全員で歌うという試みがなされている。)

1曲目のメッセージ、「街の上に正論が渦を巻いてる。」まさに今の世の中だ。最近SNS上だけじゃなく、身近な知り合いでも正論でマウントを取る姿が目立ってきた。お互いに正しさを持って生きているのに。

考えさせられたあとの「そのいのち」。言語感覚が素敵で頭空っぽになって踊った。ああ生きてて良かった。これは当分の定番になりそうだし、また聴きに行こう

レーベル設立

新アルバム発表を契機に、同名の音楽レーベル・AINOUを立ち上げることが発表された。スペースシャワーミュージック内のレーベルとして作られるらしい。本格的に業界が注目し始めた京都の才能。要チェック案件だ。

おわりに

今日のライブ、本当に最高だった。ぜひ新アルバムの熱が冷めないうちに見に行ってほしい。

8月27日(月)には日本最古のライブハウス京都・磔磔で中村佳穂バンドでの演奏がある。メンバーは未発表だが、対バンがめちゃくちゃ良いのでオススメ。

シンガポールのすごい人たち。そんなに見れる機会無いと思う。

しかもライブ会場でレコード買ったら凝ったサインを書いてもらえる。一人当たりの労力がすごい。

それではまた会場で会いましょう。

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