RADWIMPS、バカ売れ
俺らのRADの名前が、母ちゃんの口から出てきたとき、目ん玉飛び出るほど驚いた。これが『君の名は。』効果、映像の持つ力ってすげえ。ところでYouTubeで前前前世が何回再生されているか知っていますか?
197,078,088 回。とっさに単位がわからないくらいヤバい。サザンもスピッツもピコ太郎も遥か彼方に置き去りにして、競ってるのが星野源の「恋」しかないくらいヤバい。国内アーティストでこれを超えるのが、韓国との二軸でやってるK-pop勢と米津玄師しかない。ちなみに米津はMV再生回数1億超えが5つある、海外の大物ラッパーかよ。
とんでもない影響力を持つRADWIMPS。彼らはどんな音楽シーンを開拓し、生み出してきたのか。彼らと仲が良かったり、影響を受けていたり、単純に似ていてファン層が被っているバンドを聴いて考えていこう。
BUMP~RAD~米津軸
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作詞作曲担当の野田洋次郎は、BUMP OF CHICKENの超熱烈なファンで、影響を隠しきれていないところも多い。そしてこの2組が生んだ怪物が、1億再生を製造しまくる強打者・米津玄師だ。
米津玄師
RADWIMPSからの影響をほぼ唯一、声高に宣言しているのがこの人、米津玄師(本名)。RAD10周年記念で行われた胎盤ツアーで共演した際には、「俺の曲を聴いた人はわかると思うけど、RADWIMPSからはすごく影響を受けてる」と宣言、喧伝、愛を隠さない。
RADWIMPSの胎盤ツアー。幸せな空間でした。同じステージに立てたことを光栄に思います。来てくれた人ありがとう。 pic.twitter.com/xttW25m68Y
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) 2015年11月4日
なんとなく業界での立ち位置が似てきている野田と米津(中央2人)、顔の系統もスタイルも近い。兄弟かよ。メロディーの作り方や一方的な偏愛を感じる世界観に共通点を見出せるけど、米津玄師はVOCALOIDを使った作曲家だったこともあり、バンドだけでなく電子音楽も書いている。野田もソロでは電子音楽を発表しているので、そういうところも似ている。
4thアルバム『BOOTLEG』収録の「Nighthawks」は、RADWIMPSとBUMP OF CHICKENへのオマージュを込めて作った楽曲なので、どの要素が影響を受けているかがわかりやすい。曲だけでなく夜と星が出てきたり、人の汚さや浅ましさに目を向けていたりする歌詞も、この両者が米津の深い所に根付いていることを証明している。
強い影響力を持つ
BUMP OF CHICKENやRADWIMPSが邦ロックに与えた影響は大きく、音楽ファンの間でも曲の感想を言うときに「BUMPっぽい」「RADっぽい」なる曖昧なワードが飛び交っている。そして米津玄師が与えた影響が見えてくるのはこれからだ。しかし今邦楽で最も強い影響を持っている音楽シーンなのは間違いない。全員足したら10億回以上再生されてるし、日本のYouTubeで覇権を取っている人たちなのだ。
女々しい歌詞の軸
RADWIMPSの功績として、男らしさからロックを開放したことが挙げられる。2006年にリリースした「me me she(めめしい)」なんて、その名の通り苦しいほどの女々しさが漂う。その始まりともいうべきなのが、2000年代の鬼才・峯田和信が所属したGOING STEADYだろう。
GOING STEADY
童貞であることを叫ぶロック・ミュージシャン。サムネイルすげぇ。メジャーデビューはしなかったが、今でも多くのバンドマンに影響を与え続けている永遠の青春。ライブはだいたい出血するまで暴れるため、地上波ではあまりお目にかかれなかったこの峯田和伸[Gt./Vo.]、まさかの朝ドラ「ひよっこ」出演。別の方向から存在感を発揮してきている。
エルレガーデンとゴーイングステディを聴いている。僕らは歴史の上で生きている。
すてきなこと。— Yojiro Noda (@YojiNoda1) 2018年1月4日
野田洋次郎もGOING STEADYのことは好きなようだ。「コンドーム」って曲書いてるくらいだし。下ネタじゃなく、本気で世の中に自分の想いを叫ぼうとしてそういう単語を選んでいるところが似てると思う。そしてそれを引き継いだのが…。
クリープハイプ
エグくてリアルな恋愛観を叫び、数々の女性ファンを獲得するクリープハイプ。「ラブホテル」では性行為だけの関係に苦しむ女を歌った。こんな繊細な感覚を持ったロックバンド、10年前なら出てこられなかったと思う。
峯田の持っていが豪快で男くさい情けなさを、RADWIMPSがリアルな言葉で女々しく語り、他のバンドがそういう言葉を使っても売れるようになってきた。売れ始めた頃とかほぼ100%「RADWIMPS キモい」がサジェストされてたもんな。野田洋次郎にも人権は有るんですよ皆さん。
こうした草の根活動を通じて、クリープハイプを受け入れるシーンが出来たのだろう。そしてこの女々しいというワードで思い出されるモンスターバンドが…。
back number
ご存知back number。 清水依与吏[Gt./Vo.]の書く女々しい歌詞が、女子と草食系男子に大きな共感を生んでいる。こないだ田舎のうどん屋で親子丼食べてたら、丸坊主の中学生5人組が大合唱しながら入店してきやがった。うるせえ、プロアクティブしてろ。
その時にクソガキが歌っていたのが、この「高嶺の花子さん」だった。告白するどころか、海に誘うことも出来ないロックスター。back numberの由来は、別れた彼女にとって自分がback number(=型遅れ)になってしまったという皮肉。初めてリリースしたCDの名前は『逃した魚』。あまりにも女々しい。だからいい。
チャットモンチー
これまで女の子の共感を集める曲は、多くの場合ガールズバンドによって作られてきた。その中でも人気の高い、伝説のバンド・チャットモンチー。タバコの煙る繊細な失恋歌は、今聴いても色あせない。
チャットモンチーが好きだった。影響をたくさん受けた。そしていちいちこんな歌詞俺には書けないな、こんな歌は俺には歌えないな、こんな佇まいでいられないな、なんてことを思った。だから俺はこうやる。だから俺は俺のやり方でやる、俺にあるのはこれだ、とその都度思えた。
引用:radwimps.jp
これはチャットモンチーの解散時に書かれた、野田洋次郎の回想だ。女々しいロックバンドの多様性を語る上で、本来そのシーンを支えていたガールズバンドについて触れないわけにはいかない。彼女たちがいなければ、こういった表現は無かっただろう。
歌詞の幅を広げた音楽シーン
失恋を美化しきれないリアルさだったり、恋の最中の狂熱、一方的な偏愛は、GOING STEADYが風穴を空け、RADWIMPSが拡張し、クリープハイプやback numberがシーンとして完成させてきたものだろう。そしてその前提となったのが、チャットモンチーを始めとする数々のガールズバンドの存在だ。情けない男たちの心臓を揺らすように、ロックは今も鳴り続ける。
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