東京事変「赤の同盟」タイトル・歌詞の意味は?なぜスペイン語なのか

東京事変の新曲「赤の同盟」のタイトルや歌詞の意味とは?
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「赤の同盟」MV

イントロから東京事変流のレトロで扇情的なメロディーが放たれる。絡みあう個性が生むダイナミクスは、半音ずつ上がっていくサビ終わりのフレーズに示されるように、情熱的に展開していく。エネルギッシュな熱情を視覚イメージに落とし込むならば、血のように濃い赤だったのだろう。

2020年8月14日に公開された東京事変の「赤の同盟」は、ドラマ『私たちはどうかしている』の主題歌として書き下ろされた。物語を下敷きにしたと思われる歌詞の意味を考察し、注目ポイントを伝えたい。

タイトル「赤の同盟」意味

「赤の同盟」にはスペイン語でAlianza de sangreという題がつけられている。直訳すれば、sangrea(血)de(の)alianza(同盟)だ 。血盟(けつめい)という言葉がある。血で判子を押したり、互いの血をすすりあったりして、固く誓い合うことである。

作詞した椎名林檎は音楽番組でタイトルの意味について尋ねられた際に、ドラマのテーマとの繋がりを述べつつ「赤い血が通った人間同士、目的が同じ同盟のようなものだから仲良くしていこう」という意味だと答えている。

このタイトルは東京事変流に、情熱的な愛に満ちた関係性を表現する。英語ではなく情熱の国として知られるスペインの言葉でタイトルを書き、血の深い赤をイメージカラーとしているのは、歌詞に記されているように複雑な関係性にある相手との愛を歌っているからだろう。歌詞を見てほしい。

「赤の同盟」歌詞の意味

SR猫柳本線
/歌詞はこちら\

人は生きる中で、相手との複雑ないきさつや打算、自分の経験や嫉妬など、多くのものによって行動を妨げられる。そういった障害がある言葉の世界(=理性)から脱して、原初の衝動(=本能)で愛を追い求めることを歌っている。

この曲を聴いて筆者が思い出したのはシェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」だ。憎しみ合う2つの貴族の家に生まれた男女が、両家のしがらみの中で結婚し愛を追い求める物語だ。

そんなロミオとジュリエットとどこか姿が重なるのが、「赤の同盟」が主題歌として書き下ろされたドラマ『私たちはどうかしている』の主人公2人の関係性である。

『私たちはどうかしている』あらすじと「赤の同盟」

15年前、ある和菓子店で殺人事件が起こった。殺された若旦那の息子である高月椿の証言により、女性職人が殺人容疑で逮捕された。逮捕された職人の娘である花岡七桜と高月椿は幼馴染であり、互いが初恋の相手であったが、この事件をきっかけとして憎しみ合ってしまう。
そして時は流れ、思いもよらぬ形で再開した二人。椿は自分自身の結婚話を破断にするために、かつての幼馴染と気づかず七桜にプロポーズをする。七桜は母の無実を証明するため、プロポーズを受け入れるが…二人には多くの困難が待ち受けていた。

老舗和菓子店を舞台にしたミステリー×恋愛の『私たちはどうかしている』は、ロミオとジュリエットのように、複雑な家庭環境に翻弄される男女の物語である。殺人という流血沙汰が2人を結びつける物語に着想を得て「赤の同盟」の歌詞が書かれたのだろう

出会い直すという不思議な言葉が歌詞に出てくるのも、この物語があるからだ。

おわりに

不要不急の対義語が、歌詞に出てきた「必要火急」だろう。人生は短く、またおわりも分からない。だからこそ常に全力で生きていたい。どこか退廃的だったかつての椎名林檎の姿勢と違い、非常にエネルギーに満ち溢れた「赤の同盟」。

閉塞感に満ちた今だからこそ、彼女の熱量が社会に明るさを与えている。

ドラマを踏まえて和菓子の九尾の狐がジャケットに採用。九尾の狐に対する印象は両極端である。平和な世の中を示す神の遣いであるという記述や、美女に化けて世の中を惑わせる悪しき獣であるという話もある。

良い時代に九尾を観た人は平和の象徴だといい、悪い時代に九尾を見た人は悪の化身だといったわけだ。九尾の狐は見る人の状況によって印象が変わる、写し鏡のような存在である。

思えばあらゆる物事は、客観的事実ではなく、無意識下で受け取る印象をベースにした主観で判断されている。東京事変はこれまで孔雀をモチーフとして活動してきた。今回のジャケットは九尾の狐とも孔雀とも取れるよう、あいまいなデザインにしているのだろう。最終的な判断を下しているのは、あなたの主観なのである。

シングル『赤の同盟』には本曲の他に、全編博多弁で書かれた 伊澤一葉作曲「名実共に」と、シティポップ風の洒落たアレンジが夜風に心地いい浮雲作曲「玉座の罠」が収録されている。聴く者によって如何様にも変わり得るこの三作、ぜひチェックしていただきたい。

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