「宇宙の記憶」
まずは見て、聴いてほしい。椎名林檎が得意とするムーディーなジャズのアプローチが、様々なアーティストのライブに引っ張りだこのクラブジャズバンド・SOIL&”PIMP”SESSIONSの華やかなホーンによって彩られる。その上に乗るのはアニソン界の妖精・坂本真綾の妖しい歌声である。
今聴いていただいているのは、1968年に放映され、幾度もリメイクされてきた傑作アニメ『妖怪人間ベム』の50周年記念作品『BEM』から、オープニング曲「宇宙の記憶」だ。7月から公開される本アニメは、名目通り昔からのファンの期待に応え得る作品になるはずで、大人向けのビターな味わいが魅力のアニメに仕上がってくるだろう。
だからこそ椎名林檎、だからこそSOIL&”PIMP”SESSIONSである。
SOIL&”PIMP”SESSIONSがBGMも担当
『昭和元禄落語心中』への曲提供や紅白への出演で椎名林檎を知っているアニメ好きの皆さんの中にも、SOIL&”PIMP”SESSIONS(ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ)を聴いたことが無いという方がいるかもしれない。
サックスやトランペットといった管楽器主体のジャズでありながら、ロック顔負けの激しさと熱さが特徴的なバンドで、地上波で放送中の音楽バラエティ番組『関ジャム 完全燃SHOW』へのメンバー出演や、ドラマへの楽曲提供でにわかに火が付き始めている。
今回「宇宙の記憶」の公開と共に、『BEM』のBGMを彼らが手掛けることが発表された。「賭ケグルイ」や「7SEEDS」など様々なアニメ音楽と劇伴をこなしてきた未知瑠が共作。盤石の布陣である。ジャズから離れ、キャッチーな音楽も創作出来るSOIL&”PIMP”SESSIONS、彼らの音楽が『BEM』にどんな色のムードを生み出していくのか、7月が待ち遠しい。
坂本真綾
逆に音楽好きの方々にとっては、坂本真綾の方が未知の存在だろう。『カードキャプターさくら』のOPテーマ「プラチナ」や『マクロスF』の「トライアングラー」などで歌唱を披露しながら、『スターウォーズ』を含むナタリー・ポートマンのほとんどの出演作の吹き替えなど、声優活動も精力的にこなしてきた。アニメ界隈では知らぬ者のいないスターだ。
「トライアングラー」ではアニソンとして驚異のプラチナ・ディスクを受賞。声優兼歌手としてトップクラスの実力を持つ彼女は、オープニング・テーマだけでなく、「謎の女」という重要そうな役で『BEM』に出演することが発表された。
妖怪推しの椎名林檎
紅白への出演や、2014年のワールドカップテーマ曲「NIPPON」などで、音楽好き以外にも知名度のある椎名林檎。「宇宙の記憶」で作詞・作曲・編曲を務める彼女はここ数年、自分の表現に妖怪の要素を取り入れ始めている。
2015年に行ったツアーは「椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015」と名付けられ、その時期から自身のバックバンドのことをマンガラマと呼ぶようになった。マンガのように現実離れしたラマ(サンスクリット語で妖怪)というニュアンスであり、超絶技巧のミュージシャンたちを妖怪になぞらえている。
2015年の両A面シングル「長く短い祭/神様、仏様」から続くこれらの活動が、『BEM』への主題歌提供へと繋がっていったのではないだろうか。
しかし椎名林檎はタイアップだからといって、自分の表現を曲げる人ではない。例えば『news zero』にテーマ曲としてバラードを書いてほしいと依頼された際に、納品したのが次の曲である。
エレファントカシマシ宮本浩次とのコラボ曲で、2018年の紅白で演奏した「獣ゆく細道」だ。『news zero』の人たちは妖怪ぐらい目玉が飛び出ただろう。
ここでも華々しい管楽器の音の上に、ムード歌謡の風情を纏った椎名林檎が君臨する。ジャズを混ぜ込んだ作風は彼女の得意分野である。いったい『BEM』のオープニング曲はどんな仕上がりになっているのだろうか。「獣ゆく細道」で見せた起伏に富んだ展開が待ち受けているなら、僕らはまだその魅力の半分も掴めていないことになるだろう。
おわりに
あまりに期待が先行してしまい、まだ情報が少ない「宇宙の記憶」について3000字も書いてしまった。今後も情報を追加していく予定なので、たまにのぞきに来ていただけたらすごく喜びます。下部のコメント欄も賑わせていってください。それでは。
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