「西野カナ 戦略的に恋愛病患者を演じた説」に見る活動休止の理由

西野カナが2月の横浜アリーナ公演をもって活動休止にはいることが発表された。その活動休止の理由を、西野カナがアンダーグラウンドな音楽好きという情報から読み解いていく。
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西野カナは恋愛病患者とされている

西野カナの曲は両極端に評価されている。(主に若い女子の)共感する意見vs(それ以外の)小馬鹿にする意見の2つが目立っていることは、SNSなどで西野カナとサーチしてもらえればすぐにわかることだ。

西野カナの歌詞の特徴は、共感を生む分かりやすさだ。例えば「会いたい」というニュアンスのフレーズを持つ曲が20曲以上あり、彼女が言いたいことは分かりやすい。代表曲『会いたくて 会いたくて』にも、解釈が必要なほど難しい詞は出てこない。しかしこの分かりやすさは年を重ねた人ほど、馬鹿らしく聴こえるはずだ。

「会いたい」から「会いたい」と言う、それは音楽と言えるのか?

ということだ。しかし西野カナは頑なに恋愛まっしぐらの曲を書き、それによってファンを獲得してきた。ここで先日の「関ジャム」という音楽番組に、西野カナが出演した時のエピソードを紹介しよう。

西野カナの作詞は戦略的

多くの女性の共感を生み大ヒット曲となった『トリセツ』。YouTubeでも5000万回以上再生され、2016年の著作権使用料分配額(国内作品)ランキングで8位を獲得したこの曲を作った際の、作詞法を「関ジャム」で公開した。

それは<マーケティング作詞法>と名付けられた方法だった。

彼女は楽曲のコンセプトを考え「企画書」に記し、独力で詞を一度完成させる。その後はアンケートや取材によって、「企画書」に沿った感情を多くの女性から集め、統計を取ることで多かった意見を抽出し、『トリセツ』の歌詞を作ったというのだ。

西野カナは戦略的に恋愛病患者を演じていたのである。そしてそれは見事にハマり、若い女性たちの共感を生んだ。今年で9年連続紅白歌合戦に出場した日本の歌姫となったのだ。すげえ。売れていない音楽が悪いとは決して言わないが、売れている音楽は全部すごい。これだけは確信を持って言える。では西野カナはどういう音楽ルーツを持っている人なのか。

西野カナはアングラ音楽好き

J-POPの歌姫というイメージが強い西野カナだが、その趣味嗜好は多岐にわたる。小学生の時に聴いて衝撃を受けたアルバムとして、世界一売れたラッパーであるエミネムの『ザ・マーシャル・マザーズ・LP』を挙げている。1週間で179万枚を売り上げるという伝説的な記録を残したこの2ndアルバムに、その年齢から目を付けるとは。

洋HIPHOPの和訳サイト作らないか? - 03 The Way I Am
Dre,テープを回しておいてくれ、 おい、音をもうちょっと大きくしてくれ、 この曲を捧げるぜ....えっと...クソっ、とにかく黙って聴け 俺はマリファナとマリフ...

収録曲「The Way I Am」の歌詞はかなり過激なので、一度読んでみてほしい。意味までは分かっていなかったと思いたい。西野カナは小学5年生の頃からホームステイに行っていたほど海外志向の強い人で、HIPHOPを聴いていたのも今考えれば不思議なことじゃない。

普段はJ-POPを聴かない

インタビューによれば西野カナは普段、J-POPを聴かずにレゲエを聴いているらしい。実は中1から大学生に至るまでレゲエに傾倒し、そのジャンルの大型フェスにも出没していた。ジャパニーズレゲエの代表・MINMIを憧れと語る彼女の守備範囲は広い。

Slipknotすら聴く

西野カナは某インタビューでSlipknotのことを好きだと発言していて、どこまでも彼女の通った音楽ジャンルが広がっていく。Slipknotは強烈なビジュアルイメージと、過激な歌詞で知られるメタルバンドだ。『会いたくて会いたくて』と遠すぎて、西野カナのイメージが掴めない。

ひとつだけ彼女の音楽観についていえることがある。彼女が聴いているのは、自分たちの音楽を堅く持っている人だということだ。自分のやりたい音楽をやり続けた結果売れた人たちなのだ。HIPHOPはHIPHOP、レゲエはレゲエ、メタルはメタルとして、その枠組みの中で売れている。いわばメジャーシーンの売れ線に対抗する、インディー志向のミュージシャンたちだ。そしてそれはリスナーに合わせて歌詞を書いていく西野カナの姿勢と、相反する

インディーとメジャーの狭間で

インディー志向を持ちながら、メジャーシーンで自分の戦略を貫き続けた西野カナ。自己矛盾に陥りながらも、彼女のアーティストとしての誇りを保っている、その理由は何なのか。


それはやはり歌の圧倒的な上手さではないか。歌詞に注目されがちだが、西野カナの声の伸びは素晴らしい。実力が無ければ西野カナは売れなかっただろうし、これが彼女の誇りなのである。

活動休止の理由は

であれば活動休止の理由はこう考えられるだろう。自分の誇りを支えていた歌声が、上手く出せなくなった。実際に2018年の紅白歌合戦出場時の演奏では、その声の不安定さが多くの視聴者から指摘されていた。人間は年齢を重ねるごとに体が変わり、声も変化していく。高音を得意とする女性歌手は、浜崎あゆみしかり華原朋美しかり、この変化に悩まされてきた。

そして西野カナは今年で30歳になる。これまで貫いてきた10代~20代前半にとっての歌姫という立場にい続ける意義が、失われつつあるのではないか。30代が10代の心を完璧に読み取った曲を書いても、イリュージョンは生まれない。これまでの西野カナが持ってきたリアリティー、「この人私生活でもこんなことばっかり考えてるんだろうな感」は失われてしまう。新たな自分の立ち位置を探すべきタイミングに差し掛かりつつもあるのだ。

自分のアイデンティティを支える、声と<10代の歌姫>という立場が失われつつある今、西野カナは大きな変革と立ち向かっているのかもしれない。そしてこれが、西野カナが活動休止を宣言した理由だろうと、筆者は推測している。

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