【広島】ずとまよ コズミックどろ団子ツアーライブレポ

ずっと真夜中でいいのに。のアコースティックライブ『コズミックどろ団子ツアー』10/22広島文化学園HBGホールでのライブの様子をレポート。
※非公式のライブレポートです。

10/22 コズミックどろ団子ツアー@広島

広島文化学園HBGホールで行われたのは、ずっと真夜中でいいのに。の2年ぶりのアコースティックツアー。ピアノ・ギター・パーカッション・未来楽器(オープンリール)のみで演奏される小宇宙編成とのこと。

会場内にはコズミックな雰囲気のどろ団子が9点飾られていた。藤井一至さんは実際に土の研究者の方で、ツアーのテーマに合わせて本職の研究者の方に協力してもらうという圧倒的な非効率がずとまよ過ぎる。磨かれた光沢のあるどろ団子も良いし、マットで砂っぽいどろ団子も良い。20年ぶりに作りたくなってしまった。

内省的でコズミックな宇宙の旅

「内省的でコズミックな宇宙の旅」と銘打たれた本ツアー。ステージの演出は闇の中で星がきらめき、宇宙を感じさせる物体の下で演奏をするようなイメージだった。闇の中でひそひそと話す人々、真夜中を感じさせた。

「サターン」から始まる追体験

ステージにACAねが登場し、静かに見守る観客。ACAねが高校生の時に作ったという「サターン」が弾き語りで演奏された。闇の中にACAねの姿と星空だけが浮かぶ。彼女の原初の音楽活動を回想シーンとして見ているかのような、不思議な感覚に陥る。終盤、きっしー(piano)、こもちゃん(guitar)、イカロスかみやん(percussion)がアンサンブルに加わる。まるでずっと真夜中でいいのに。の歩みを追体験しているようだ

ピアノのフレーズから続けて演奏されたのは「正しくなれない」、そして「クズリ念」。「クズリ念」は一つ前の名巧ツアーでは原曲と大きく異なるストリングスアレンジで演奏され、その後の関西万博ライブではピアノメインのアレンジでも歌われてきた。コズミックどろ団子ツアーでは、アコースティックギターを伴奏のメイン楽器としたアレンジで演奏された。孤独を肯定するこの曲は闇の中に浮かぶ小宇宙編成だからこそ、力強く響いたように思う。

続けて演奏された「蹴っ飛ばした毛布」で、ステージ上の天体が光る。ドラマティックな展開で曲が閉じられ、観客による歓声で迎えられた。

オープンリールアンサンブル登場

MCでは作品作りを「暗闇の中にきらめく砂鉄」を探すような時間だといったACAね。その大変だけど肯定されるべき孤独な時間を、ステージ上の暗闇がほんの少し教えてくれる。

そしてMCはずとマッド宇宙観測研究所での宇宙人(マグネシア)との交流に派生。マグネシアとして登場した2人はもちろん、オープンリールアンサンブルのハルーンとマサーンだった。彼らのオープンリールソロから派生する形で、5曲目「グラスとラムレーズン」が演奏された。

さらに内面へと向かうバンドは「Blues in the Closet」を演奏する。青い光を二つのミラーボールが反射し、会場が青いきらめきに満たされる。ここまで着席で見ていた観客たちに「立っていいよ。」と言いながら、7曲目「猫リセット」が曲中でのテンポアップやACAねの扇風琴によるソロ、そして2段構えのアウトロによってダンサブルに演奏される。

続けて演奏されたのは大幅にアレンジされた「微熱魔」。かなりテンポを遅くし、ボサノヴァ風の菰口のアコースティックギターがリードする形で、新しい「微熱魔」が提示された。超絶演奏が印象的なこの曲を、すこしリラックスできるような曲調にガラッと変えてしまえるのも、彼女たちの魅力だった。

カバーと即興

再び観客に着席を促し、カバー演奏のコーナーへ。この日はぬゆりの「ロウワー」とイタリア童謡から「みそ猫の団子(黒猫のタンゴ)」が演奏された。特に「ロウワー」では通常より低音成分が強くエッジの効いた歌声が披露され、ACAねの歌唱の幅広さが伝わってきた。

ライブのお楽しみである即興パートでは、どろ団子を高い場所から落とし、割れた団子で演奏する曲を決める(そしてそのためにどろ団子を作りに行く)という、なんとも手間のかかった演出だった。選ばれた楽曲は「機械油」だった。

この日の即興は驚異的だった。前半はオープンリールのミニマルな低音とパーカッションのみで歌われた。つまり「ほぼアカペラ」である。なぜ正確に歌えるのか不思議だった。そして中盤にかけ、ギター・ピアノが参加し、最後は全員がギアMAXになるという、完璧なクレッシェンド。美しかった。

再び内面を深化する世界へ

その後、原曲に比べて音数を極端に減らしたアレンジで「Ham」「違う曲にしようよ」が演奏される。演出も相まって誰もがACAねの、そして自分の内面に向き合うような展開に。そのまま演奏された「袖のキルト」、徐々に世界が広がっていく。

そして15曲目はまさかの「TAIDADA」。アコースティックライブで演奏されるとは思っていなかった人も多いのでは。テンポダウンなどをするわけでもなく、原曲さながらにイカロスかみやんがパーカッションを連打し、圧倒的な音圧で演奏された。バンドメンバー6人で、エレキギターなしで観客を躍らせてしまう。中盤に挟まる菰口の魂の爆速アコギソロと、アウトロで演奏されたきっしー(岸田勇気)の連弾。その技術の高さに痺れる。今日一番と言ってもいい歓声が上がり、賛辞が多数の指笛で伝えられる。

そして本編ラスト。歌詞も踏まえて「心と体がずっと違う薄っぺらい歌」として歌われたのが「またね幻」だった。バロック調のような壮大なピアノを軸に再構成されたこの楽曲は、ミニマルな構成だからこそ、人物の輪郭がよりはっきり浮かび上がるようだった。

アンコールは暗闇から

そしてアンコールへ。照明が落とされ、闇の中にステージ背景の星空と、観客が持つリングライトの明かりだけが浮かぶ。演者がどこにいるか見えない明度の中で、「過眠」が歌われた。

続くMCで、創作活動について改めて触れたACAね。なにか出来そうな夜更かしの中で、自分の負の感情が強まるところで作品をつくるという。「ボツも丸めてどろ団子にして、磨いて、綺麗にして、割って、作り直して」といった繰り返しが最高で、その繰り返しが出来るのが観客の支えによるところだと感謝を述べたACAね。

最後の曲「花一匁」が演奏される。ずっと真夜中でいいのに。の名前の由来や、創作活動に臨むACAね自身の姿を描いた、まさに本ライブのラストにふさわしい曲だ。曲中ではライブでは定番になっている各メンバーの紹介も兼ねたソロ回しが行われ、終盤にはフラメンコ的なアレンジも挟まれるなど、今回のツアーならではの「花一匁」で最後まで加速し続けた。宇宙船でACAねが飛び立っていく演出でライブは閉じられ、「また同じ小宇宙で」という言葉が最後に残った。

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