平成最後の夏が終わろうとしている。なんでもかんでも平成最後って言うのは嫌いなんだけど、夏だけは別だ。毎年いつまでも続いてほしいと思っている季節が、今年は平成と一緒に終わってしまうんだ。
夏の終わりを歌った曲はどれも寂しい歌ばかりで、余計に切なくなるだけなのにどうしてか惹かれてしまう。今の季節に聴いてる曲を紹介しようと思う。
夏の日、残像/ASIAN KUNG-FU GENERATION
邦ロックの先頭を走り続けてきたアジカン。ほとんどの曲で作詞作曲を担うゴッチは、切ない歌に合う声の持ち主だ。「夏蝉」「Re:Re:」「ラストダンスは悲しみを乗せて」では、どうにもならない過去や時間を歌ってきた。「夏の日、残像」でも終わった夏への想いを綴っている。
ゴッチの敬愛するNumber Girlの「OMOIDE IN MY HEAD」は過去を振り払おうとする曲だけど、「夏の日、残像」で彼は思い出に必死にしがみつく。その姿勢は真逆に見えるが、想い出の夏に囚われている点では同じなのだろう。
そしてこの曲、トリビュートアルバムでamazarashiがカバーした版も良いので聴いてほしい。
残ってる/吉澤嘉代子
様々な人物を演じ分けながら曲を書いている、現代の魔女・吉澤嘉代子。初体験を経て世界が変わって見える少女の感覚と、夏から秋への移り変わりが重ねられている。2番サビの愛おしそうな呟きから悲痛な叫びへの移り変わりは、キャラクターに入り込める彼女にしか出来ない。演技であり歌なのだ。
井上陽水「帰れない二人」がイントロでオマージュされているのも素晴らしい。こうして重ねられることで2人の姿が浮かび上がり、余計に1人で帰る朝が切なく感じられる。
ジャケットも不思議な雰囲気を纏っている。
甲州街道はもう秋なのさ/RCサクセション
「帰れない二人」の作詞を担ったのは忌野清志郎。彼が書いた夏の終わりの名曲が「甲州街道はもう秋なのさ」だ。何かに裏切られた男は、車で甲州街道を走り続ける。秋という季節に終わっていく関係への想いが込められている。
「残ってる」と同じように、秋は夏の終わりを指すキーワードとして登場する。
BO GUMBOSのkyOnが演奏するアコーディオンが物悲しくて、夏から秋への移り変わりをより一層強調する。ああ切ない。
セプテンバーさん/RADWIMPS
恋愛ソングを発表しまくって10代から熱烈な支持を受けていた頃の曲。夏の終わりを想いながらも秋を肯定していく流れで、ちょっと珍しい。
どのアーティストも夏と秋を例え話に使っているけど、この曲ではマンネリ化していくカップルが歌われているように思う。付き合いたての盛り上がりを夏、穏やかだけど変化のない日々を秋に例えているんだろう。
付き合ってすぐのドキドキは終わってしまっても、その時感じた全部がまやかしってわけじゃない。そういう感覚。共感しやすいんじゃないでしょうか。今回この曲だけ切なくないな…。
星のラブレター/THE BOOM
THE BOOMが「島唄」で沖縄特化型バンドになる前、2ndシングル「星のラブレター」は秋の歌だった。しかもめちゃくちゃレゲエだった。夏休みの終わりに訪れる、突然の別れ。
動画には無いパートだけど、コミカルに描かれるコオロギが印象的だ。少年らしい希望のある終わり方なのが良い。
せぷてんばぁ/クレイジーケンバンド
ソウルフルにリアルな情感を歌い上げてきたクレイジーケンバンドの「せぷてんばぁ」。フルートが夏の終わりにマッチする曲だ。
恋の終わりをOLとしての日常と結びつける感性がすごい。恋の歌に仕事の話が出てくるなんて。2001年のリリースだけど、今でも生き続けてる曲だと思う。分かりやすい言葉で歌われた恋の歌なのに、唯一無二の個性があって、抜群に共感出来て、語りつくせない魅力がある。最強です。
渚にて幻/indigo la End
夏の終わりに嘘をつかれる「せぷてんばぁ」。そして夏の終わりに嘘をつく「渚にて幻」。作曲者が2回り以上違うのにほぼ同じ状況になっていて、日本人の秋への想いに通底するものを感じる。
秋はやっぱり別れの季節だ。ちなみに外国ではどうかというと…どうなんだろう。
ディスコでかかりまくった名曲「September」では9月21日に女性と出会っている。真逆と言えるのかもしれないけど、サンプル数1なので何とも言えない。
なつやすみ(終)/ザ・なつやすみバンド
夏の終わりの切なさをサウンドで完璧に表現した曲。毎日が夏休みであってほしいという想いがバンド名になっただけあって、夏の終わりへの情感がハンパない。
あまり多くの言葉を使わずに音で切なさを表現するあたり、夏休みのプロという感じがしてすごく好きだ。
若者のすべて/フジファブリック
邦ロック、夏の終わりの金字塔といえばこれ。Mr. Childrenの桜井や柴咲コウがカバーするほど、ポピュラリティを持った名曲だ。
層のように重なるいくつもの夏が、自分とあの娘の間に横たわっている。いつまでも忘れられない思い出が、呪いのように自分をモヤモヤさせるけど、実はそれが運命の赤い糸だったのかもしれない、という話。
志村正彦の多くを語りすぎない歌詞が、見事にハマっている。
赤黄色の金木犀
ただ「若者のすべて」は希望のある終わり方をする歌なので、今回の趣旨と少し外れる。だからフジファブリックがリリースした秋の曲、「赤黄色の金木犀」も紹介しておこう。
金木犀は秋に花を咲かす木で、その特徴的な香りは季節の移り変わりを僕らに教えてくれる。未遂に終わった告白を後悔しながら、焦りを抑えきれない自分を歌った曲。時が立つほど恋愛の初期衝動は薄れていき、いつの間にか訪れた秋に胸が騒ぐ。
すごく繊細な感性で書かれた曲だ。やっぱり志村はすごい。
夏休み/吉田拓郎
独特の言語感覚でフォークの新時代を作り上げた吉田拓郎。彼が作った「夏休み」は、今は無き夏休みへのノスタルジーが歌われている。
自分の体験した夏休みへの想いを正直に歌った曲だからこそ、誰もがイメージする日本の原風景が描き出されている。こんな夏休みを過ごせる子供は、減り続けていくんだろうな。
おわりに
平成最後の夏、デカい台風が来たり馬鹿みたいに雨が降ったり、色々とすごかった。色んな思い出が出来た。やっぱり俺にとって夏は、いつまでも続いてほしい季節だ。
また皆さんの元へ楽しい夏が訪れますように。それでは。
コメント
世代が合わないわ