【ライブレポ】君島大空-岩音2025@玄武洞

2025年10月4日に兵庫県で行われた、君島大空が出演したライブ「岩音2025」についてのライブレポートです。
※非公式のライブレポートです。

2025年10月4日 岩音2025

2025年10月4日、兵庫県豊岡市にある巨大な岩壁・玄武洞の前で、君島大空のソロ演奏が行われた。「岩音」と名付けられたこのイベントには過去に後藤正文や青葉市子、カネコアヤノも出演している。

柱状節理(規則的に並んだ柱状の岩)が特徴-青龍洞で撮影

チケットは早々にソールドアウトし、大阪から来ると電車で3時間以上かかる国の天然記念物「玄武洞」に、目算で300名を超える人が集まっていた。筆者は予定していたバスが来なかったので、同じ待ち列に並んでいた方とタクシーを相乗りして会場へ向かったが、親子で君島大空を聴きに来たとのこと。(バスが来なかったことで)その場にいる人たちが協力して玄武洞に向かっていて、そこにはゆるいチーム感も生まれてきて、なんだか楽しかった。

160万年前のマグマが生み出した巨大な岩壁の前で

巨大な柱状節理が複雑な表情を見せる玄武洞の前にはステージが組まれていて、スタッフが天気模様を見ながら屋根を取り外した。涼しい風が吹く中、君島大空が観客の後方から現れる。彼がガットギターをチューニングする間、秋の虫の声と、風が木を揺らす音だけが聴こえた。

昨夜から降り続いていた大雨が上がり、淡い夕景が広がる空。1曲目に優しく歌い出されたのは「銃口」だった。詞に出てくる”夕暮れ”が現実の風景と重なり合う。そして「銃口」の締めくくりに「Lover」の一節を引用し”魔法の溶けた長い夢に居て それでもずっと君を抱きしめている 夕暮れの中で”と詞を変え歌った。

逆再生されたガットギターのフレーズを巧みに使いながら、つなぎ目なく「午後の反射光」へと展開していく。アウトロで荘厳な残響音が玄武洞を満たし、「遠視のコントラルト」が始まる。曲中の”止んだ雨の中に”というフレーズが似合う1日。高度な技術と様々なエフェクトが組み合わされた演奏は、観客の大きな歓声をもって迎えられた。

MCでは玄武洞について「後ろにすごいビジュアル」「先輩って感じがします」と触れた。暗くなりライトアップされた玄武洞に目を向ける観客。余談だが、玄武洞は理科の授業で誰もが習う「玄武岩」の語源であり、160万年前のマグマが固まって出来たガチ先輩である。

複数の曲や未発表のフレーズが組み合わされたセットリスト

そして掌でミュートされた低音弦を爪弾きながら、「世界はここで回るよ」を柔らかく歌う君島大空。夜を歌ったこの曲が、優しく空間を包み込み、そのままギターのハーモニクスが組み込まれたグルーヴィーなループへと展開し、同じく夜を歌う「19℃」へと繋がっていった。淡い赤に照らされた玄武洞、虫の声と曲が溶け合っていた

そして随所で横断的に歌われる”物語が終わったあとも…君の目を見つめている”という既存曲に含まれないフレーズ。いつしかあたりは暗くなり、闇の中に岩壁と君島大空の姿だけが浮かぶ。世界はここだけ、”俺”と”君”だけという感じがした。いつにもまして君島大空が彼自身を、そして聴いている私自身のことを歌っているようにも感じた。

抑制された音量はスムーズに「向こう髪」へと接続していった。超絶技巧に魅せられるこの曲は、ギターソロに歓声が続いた。そしてディレイによる荘厳な残響音が広がる。ボーカルエフェクトがかけられた君島の声は語る。

物語が終わったあとも…ただそれだけが嵐

つぶやくように歌いながら、強くかけられたディレイとリバーブでスローに歌われる「˖嵐₊˚ˑ༄」へと展開。既存曲とこの場で繰り返される未発表のフレーズが組み合わされたアンビエント的な立ち上がりから、徐々にテンポが上がっていく。ギアがMAXになり、原曲よりもハイスピードの「˖嵐₊˚ˑ༄」を通じて降り注ぐ音の粒。玄武洞を照らすライトも落とされ、君島大空だけが闇の中に浮かぶ。凄まじい音圧の演奏が終わり、間髪をいれず今日一番の大歓声があがった。

MCを挟み「迎」「- – nps – -」「光暈」とシームレスに繋げられていく素晴らしいアレンジが続き、玄武洞のライトアップも赤から白へと変わる。柱状節理に君島大空の巨大な影が揺れる

そしてMCでは「音が少なくて落ち着く」「街中だとこんなに夜が暗くない」「地元みたいで落ち着く」と玄武洞で歌えてよかったと語った。

「Lover」で始まり、「Lover」に終わる

そして冒頭にフレーズを差し込まれ、今回の演奏のテーマとも言える楽曲「Lover」へ。

圧巻の時間だった

静寂の中に自然の音だけが聴こえる。囁くように歌われるのはやはり個と個、”俺”が”君”だけをみている世界。MCで「歌の中でしか会えない人」がいて、「いけない場所」があって、「なれない自分」があると語った君島。「歌の中でしか会えない人」の実像を追うように、徐々に切迫し、大きくなっていく音量。静寂から始まった「Lover」は力強く姿を変えていった。終盤、激しく演奏されるギター、繰り返される”ずっと抱きしめていて”というフレーズが、最後にはマイクを通さず自然の音響に任せる形で歌われた。玄武洞の洞穴に君島大空の肉声が反響し、物語の終わりは物語の始まりへと接続した。ここで演奏本編は終了し、ステージを後にする君島。

アンコール

会場内はライトで飾られていた(※急ぎバスに向かう手ブレ)

アンコールを求める拍手は、玄武洞からやまびこのように跳ね返ってきていた。そしてステージに再び姿を現した君島大空は、ブルージーなフレーズをゆったり弾きながら「都合」を歌った。その後「沈む体は空へ溢れて」が演奏され、轟音から静寂へ展開し、最後に「夜を抜けて」が歌われ岩音2025は終幕した。

既存曲がこの季節のこの場所、この時間に合うように見事に組み合わされ、”物語が終わったあとも…”という単発のフレーズやアンビエント的なガットギターの演奏により見事に織り上げられた素晴らしい演奏だった

ライブ本編の始まりと終わりが接続し、時間が経過していく巧みなセットリストの美しさや、アンコールが始まってからスタッフに演奏可能な持ち時間を確認したとは思えない完成度の3曲の組み合わせ方に衝撃を受けた。この場所で見られてよかった。きっと誰もが、君島大空を近くに感じただろう。静寂と闇の中で。

ありがとうございました。

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