主題歌として
そもそも『時をかける少女』の主題歌として書かれた曲は、挿入歌になった『変わらないもの』です。細田守監督は同曲を聴いて、「これはあのシーンで挿入歌として流したい…」と考え、新たな主題歌の制作を依頼しました。
そうして生まれた、いわば第2のテーマソングが『ガーネット』なのです。ガーネットの宝石言葉は「友愛」「友情」。本編や歌詞とどのように絡んでくるのでしょうか。
あなたの描写
グラウンド駆けてくあなたの背中は
空に浮かんだ雲よりも自由で
ノートに並んだ四角い文字さえ
すべてを照らす光に見えた引用:ガーネット/作詞作曲:奥華子
冒頭のフレーズから、奥華子の想像力が光ります。
あなたに関するものは、例えノートに書かれた文字だって輝いて見えるという一節。四角い文字という言葉からは、男らしく、しかしガサツではない「あなた」の姿が浮かんでくるようです。素晴らしい描写力です!
友情が変わっていく物語
好きという気持ちが分からなくて
二度とは戻らないこの時間が
その意味をあたしに教えてくれた引用:ガーネット/作詞作曲:奥華子
曲中では友情が恋愛へと変わっていく様子が描かれています。
その変化に境目はありません。友情は突然に恋愛へと変わるのではなく、ゆっくりと変わっていくのです。そして主人公・真琴のように、誰もが後から感情の芽生えに気付くのでしょう。
恋の歌でありながら、その元になった「友情」を表す「ガーネット」を曲名にしているのが、お洒落ですよね。友情から恋愛が生まれた本作にぴったりの主題歌です。
別れ
あなたと過ごした日々を この胸に焼き付けよう
思い出さなくても大丈夫なように
いつか他の誰かを好きになったとしても
あなたはずっと特別で 大切で
またこの季節が めぐってく引用:ガーネット/作詞作曲:奥華子
ほろ苦い初恋の思い出が綴られるサビでは、「あなた」と上手くいかなかったことが分かります。それでも青春の日々が、特別であり続ける現在が描かれていて、映画の未来を奥華子が想像した形になっています。
(※本作には30代になっても約束を交わした未来の人を待ち続けている、原作の主人公・芳山和子が登場します。真琴が千昭以外を好きにならずに生きていくことが暗に示されていて、ロマンチックかつ重い映画と言えるかもしれません。)
おわりに
2人の別れの場面は下記のものでした。
未来に戻ることになった千昭は去り際、泣きじゃくる真琴に「未来で待ってる」と言葉を残し、真琴は「すぐ行く、走っていく」と呟く。
引用:Wikipedia
このセリフは千昭が見れずに帰った「白梅ニ椿菊図」を未来に残すために、真琴が活動することを言い換えています。真琴がラストシーンで語った「やること」とは、絵を守ることでしょう。
欧米では変わらない友情の証として、卒業の際にガーネットを友人に送ることがあります。本作における「ガーネット」こそ、「白梅二椿菊図」なのでしょう。『時をかける少女』は、時を超えて自分の想いを届ける物語なのです。
自分が未来に何を残せるのか、考えてしまいますね…。それでは!
追記
挿入歌『変わらないもの』について書いてみました!
コメント